ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
悪性リンパ腫と闘う垣原賢人へ、
鈴木みのるからの厳しすぎるエール。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byYukio Hiraku
posted2018/08/17 11:00
鈴木みのるのチョークスリーパーに苦しむ垣原賢人。ただリングに上がっているだけでも凄いことなのだ。
1分50秒でのチョークスリーパー。
そんな垣原に対し、鈴木は大会前、こんなツイートを残している。
「メインイベントで垣原賢人と闘う。正真正銘の初対決。遠慮はしない。全力で“現在の業界トップ”と“過去の選手”の違いを見せる。全力で」
試合は、鈴木の予告通りのものになった。
垣原は、ゴングと同時にかつての代名詞でもあった掌底の速射砲と鋭い蹴りでラッシュを仕掛けるが、鈴木はガードを固めてこれを冷静に凌ぐと、掌底にタックルを合わせて懐に飛び込み、あっという間にバック奪う。そして、そのまま一気にチョークスリーパーで絞め落とし、レフェリーストップ。
わずか1分50秒、文字通りの秒殺。鈴木の圧倒的な力の差を見せつけての完勝だった。
「垣原、鍛えて出直してこい!」
試合後、リングに横たわる垣原に対し、鈴木はマイクを握った。
「おい垣原、『俺は克服しました、だから高山に力を与える』? その程度でかよ? その程度で何を与えるんだよ! それがお前のすべてか? お前の大好きなUWFはお前の一部であって、お前のすべてではないはずだ。そうだろ? プロレスにはこんな方法もあるんだよ!」
そう言い終えた直後、鈴木は垣原を蹴り上げ場外に叩き落とすと、容赦ないイス攻撃を連発。'03年に新日本プロレスの「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」でも優勝している垣原に対し、今度はUWFスタイルではなく、“プロレス”でさらに痛めつけていった。
そしてリングに引きずりあげ、スリーパーから必殺のゴッチ式パイルドライバーの体勢に持ち上げると、脳天をマットに叩きつけることなく技を解き、マイクを要求。
「おい、垣原! この続きはとっておいてやる。もっと身体を鍛えて出直してこい!」
そう言い放ち、勝ち名乗りも受けることなく去っていった。
これこそが、鈴木流のエールの送り方だったのだろう。