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筒香嘉智が横浜高の4番だった頃。
松坂世代を追い、渡辺監督に学び。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/14 07:00
横浜高校からベイスターズの主砲になった筒香嘉智。その経歴は横浜を愛する野球ファンにとっては尊い存在だ。
渡辺監督が筒香に唯一言ったこと。
渡辺は筒香に技術的な指導はほとんどしていないという。
「私が筒香に言ったことは、タイミングを見て『ホームランバッターになれ』というくらいのものでした。
指導者として改めて思うことは、言葉の使い方というのは本当に大事だということ。『言霊』という言い方が昔からありますけど、言葉というのは真剣に伝えれば本当に実現する。指導をする時も真剣に伝えることで、相手が察知してくれますからね」
7月17日、2017年後半戦スタートの日。本塁打を放った筒香は、お立ち台でのインタビューの最後に語気を強めて言った。
「今年優勝するのは必ずベイスターズだと思っています。優勝に向かって精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いします」
この時点で首位・広島とのゲーム差は9.5。どこかで優勝には届かないと思っているファンの雰囲気を、この一言だけで覆した。
それは一緒にお立ち台に上がっていた「名言メーカー」今永昇太が、筒香の発言の大きさに気後れしたのか「優勝するのはベイスターズ……だよ!」と混乱を起こしたほどだった。
言葉を伝えるタイミングの大事さ。
筒香は自分の発言が持つ影響力を知っている。
「言葉を伝えるタイミングは自分なりに考えています。ファンの方へのメッセージであり、選手全員に向けたメッセージでもあります。やっぱりチームが勝つことがファンの方が一番喜んでくれることですし、ファンの方がいなかったら僕らは試合をする価値がありませんからね」
高校時代、筒香は「明確な目標はなかった」という。先輩たちに憧れ「ああいう風に自分もなりたい」と追い掛け、ただひたすら上手くなりたいとバットを振った。