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スーパーアグリは今も走っている!
所有する佐藤琢磨ファンの夢とは。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMasahiro Owari
posted2018/08/15 11:15
SA06を自ら駆るウォルフガング・ヤクシ。BOSSGPには'97年のベネトンや'06年のトロロッソなど懐かしのF1マシンの姿もある。
何よりうれしかった'06年開幕戦。
亜久里は、チームが初めてポイントを獲得した'07年のスペインGP、そして佐藤琢磨がマクラーレンのフェルナンド・アロンソをオーバーテイクして、チーム最高位となる6位となった同年のカナダGPの名前とともに、もうひとつ忘れられないグランプリとして、チームのデビュー戦となった'06年の開幕戦を挙げ、こう語った。
「バーレーンに着いたとき、自分のクルマがあまりにも遅いのでビックリした(笑)。でも、スタッフとドライバーは本当によく頑張ってくれた。テストもできないまま、ぶっつけ本番だったのに、完走してくれたことがうれしかった。ドライバーやスタッフが全信頼を僕に向けてくれて、小さなチームだったけど、みんなで頑張っていこうっていう気持ちを共有できたことが一番うれしかった」
撤退に伴い、イギリスのファクトリーにあったレース機材は管財人の管理下に入った。その後、ファクトリーにあったマシンやトランスポーターなどはすべて競売にかけられ、スーパーアグリは完全に消滅した、はずだった。
ところが、そのスーパーアグリのマシンが、今年のドイツGPでホッケンハイムリンクを疾走していた。これはF1のサポートレースとして開催されていた「BOSS GP」というイベントだった。
佐藤琢磨の大ファンがマシンを購入。
BOSS GPとは、過去のフォーミュラカーを使用して行われる混走レースで、「Big Open Single Seater」の略。F1のほかGP2、F3000といったマシンが参加していた。今年は4月にドイツ(ホッケンハイム)で開幕し、5月のオーストリア(レッドブルリンク)、6月末から7月頭にかけてのイタリア(モンツァ)に続いて、今回のF1ドイツGPのサポートイベントは今シーズン2度目のドイツ戦だった。
そのBOSS GPにスーパーアグリの'06年のマシン「SA06」が参加していた。スーパーアグリのマシンを走らせていたオーナーは、ドイツ人のウォルフガング・ヤクシ。
スーパーアグリと佐藤琢磨の大ファンだったヤクシは、いつかスーパーアグリのマシンを購入しようと、競売の情報を常に確認し、'16年にイギリスで行われていたオークションにスーパーアグリの'06年のマシン「SA06」とスペアパーツが出品されたため、迷うことなく購入した。
「2006年にテレビでスーパーアグリの走りを見たとき、衝撃に打たれた。ゼロからチームを立ち上げて、F1に参戦。諦めないで戦う、あのレーシング・スピリットはいまでも忘れられない」(ヤクシ)