プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシー復権に挑む新監督サッリ。
アザール残留なら双方に「喜び」?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2018/08/05 11:30
セリエA屈指の名将という評価を得て、チェルシーに請われたサッリ新監督。アザールらの去就は懸念だがどんな陣容で臨むだろうか。
アーセナル相手に連動性で優勢。
サッリが好む4-3-3は、ファンも第1期モウリーニョ時代から見慣れている。だが当時のチェルシーは、コンパクトに守って一気にカウンターで勝負するチームだった。それが現在はリスクを恐れず、パスを繋いで攻め続けるチームへ変わろうとしている。
かつての4-3-3が、スペースを消して相手攻撃陣を窒息死させるための器だったとすれば、サッリが採用する4-3-3は、パス回しで相手守備陣を窒息死させるための器と言える。
本稿執筆時点での試合結果は2勝1敗。レベルの差が歴然だったパース・グローリーとの親善試合は別として、続くインターナショナル・チャンピオンズカップでの2試合は、ある程度評価できる。
7月28日にPK戦で勝利したインテル戦では、自陣ペナルティエリア付近のスペースを利用される場面が目につき、逆にPK戦で敗れた8月1日のアーセナル戦では、不用意に与えたセットプレーからリードを帳消しにされている。
しかし予想された後方のリスク以上に、予想外の速さで進む「サッリ流」の浸透度が見る者の目を引いた。前半は圧倒的に優勢だったアーセナル戦では、各ライン間の距離、プレッシング時の前線と中盤が連動。新監督を見比べると、ウナイ・エメリが指揮を執るアーセナルを上回っていると見受けられた。
カンテをインサイドハーフで起用。
W杯出場組は不在だったが、その戦いぶりで戦力不足の不安も薄らぎ始めた。サッリがナポリから呼び寄せたジョルジーニョは、3センターの中央で新たな中核となること請け合い。リズムの良いパスワークで周囲の味方を前へと動かすアンカー兼プレーメイカーとして、優れた能力をプレシーズン初戦から披露している。
4バックはそこそこ守備力がある。セサル・アスピリクエタは右CBではなく、新たに本職の右SBを持ち場とする。逆サイドのマルコス・アロンソは攻撃面の意欲と能力が高く、まさにサッリ向きだ。中央では、3バックの左CBではぎこちなかったアントニオ・ルディガーが、昨季台頭したアンドレアス・クリステンセンや、足元の技術があるダビド・ルイスらとのコンビで、安定した守りを見せてくれそうだ。
サッリは、アンカーの前に、攻守両用のハードワーカーと中盤のゴールゲッターを配する3センターを好む。前者はカンテという最適任がいる一方、後者の役割にはイングランドのサウスゲイトに倣って若手登用を願いたい。