プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシー復権に挑む新監督サッリ。
アザール残留なら双方に「喜び」?
posted2018/08/05 11:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
ロシアW杯閉幕間際の7月14日、チェルシーが前ナポリ監督マウリツィオ・サッリと3年契約を結んだことが静かに伝えられた。
クラブのお膝元、西ロンドン界隈の反応も控え目。多くのファンが、先ずはホッと一息といった心境だったに違いない。それは、早くから候補と目されていたサッリに決まったことに対するものではなく、解任されたアントニオ・コンテ前監督と経営陣の確執による険悪なムードに終止符が打たれたことへの安堵だ。
当日、筆者は他のチェルシーファンとベルギー対イングランドのW杯3位決定戦をテレビ観戦していた。クラブのプレシーズン開始1週間後に決まった新体制に関する共通見解は、「少なくとも、これで来季に向けて本格的にスタートできる」という冷めたものだった。
国内メディアの反応も同様である。就任会見が行われたのは18日。イングランドの準決勝進出で盛り上がった直後のタイミングだ。チェルシーの監督交代は4年に1度のW杯の半分周期で行われている。
とはいえ、スタンフォード・ブリッジ内のホールに用意された記者席が3分の1程度しか埋まらないのは、異例のことだ。
質疑応答は無難な回答の連続。
通訳を介して行われた約20分間の質疑応答も、無難な回答の連続だった。獲得済みの新戦力はジョルジーニョ1人。一方、去就が注目されるエデン・アザール、ウィリアン、エンゴロ・カンテ、ティボウ・クルトワの動向を問われても、自身は全権を与えられるマネージャーより、指導に専念するヘッドコーチタイプとの説明で逃れた。
チェルシーの会見では、新監督は「スペシャルワン」ことジョゼ・モウリーニョの1度目の就任会見以来、自ら好む呼び名を訊かれるのが恒例である。しかしサッリの答えは、「ただ、マウリツィオと呼んでもらえればいい」。謙虚な印象を与えたかったのかもしれないが、翌日の『サン』紙は「コーポレートワン」と呼んだ。
モウリーニョが「選ばれし者」だとすれば、差し詰め「雇われし者」か。経営陣主導の移籍ビジネスに口は挟まないスタンスが、招聘理由の1つであることも間違いない。 過去2年間でプレミアリーグとFAカップをもたらしたコンテ前監督は、就任から2年間、補強への不満を唱え続けて首を切られた。