プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシー復権に挑む新監督サッリ。
アザール残留なら双方に「喜び」?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2018/08/05 11:30
セリエA屈指の名将という評価を得て、チェルシーに請われたサッリ新監督。アザールらの去就は懸念だがどんな陣容で臨むだろうか。
サッリは名言を口にしたのだが。
サッリの初会見でのキーワードは、楽しみや喜びを意味する「ファン」。「ハードワーク」という言葉を繰り返したコンテとは対照的だ。
「選手なら誰もがボールを蹴る楽しさからサッカーにのめり込んだはずだ。内に潜むサッカー少年は大切に育てなければならない。楽しむことができてこそ、最高の力が発揮されるものなのだから」
この発言は、名言と言われてもおかしくはない。
しかしながら、自らの口から英語で伝えることができなかったことで、地元記者陣へのインパクトが弱まった感がある。会見後には、クラブ広報が「選手がプレーを楽しめれば試合に負けても構わないという意味ではありません」と、記者陣に念を押す一幕もあった。
「問題は、監督自身も仕事を楽しめるようなるだけの時間を与えられるかどうか」
そんなジョークも囁かれた会見場を去る筆者も、新体制への期待は大きくなかった。
会見翌日に決定した、チェルシー永遠のアイドル、ジャンフランコ・ゾラの助監督就任も、新体制への支持率を高めるためのクラブ戦略と理解された。
プレシーズンで独自の「色」が。
もっとも、期待度の低い中でのスタートは一概に悪いとは言えない。ガレス・サウスゲイト体制で臨んだロシアW杯のイングランド代表が、最たる例だ。システムの変更から若手の登用に至るまで、「寡黙な革命家」とまで讃えられるようになったサウスゲイトにも、就任当初には「FA(サッカー協会)のイエスマン」との見方があった。予選段階ではファンの代表離れが進むことも危惧されたほどだ。
そのサウスゲイト監督は、本番へ向けたテストマッチで独自の「色」を出すにつれて少しずつ評価を上げていった。それと同じく新体制下のチェルシーも、プレシーズンの開幕以降、じわじわと「来季が楽しみだ」と思わせるようになっている。
なぜなら「サッリのチェルシー」像が具体的に見え始めたのだ。
主要タイトル歴のない59歳が迎えられた最大の理由は、果敢に攻めるサッリのチームの在り方に他ならない。昨季までのナポリにしても、その前のエンポリにしても、極端に言えば「失うものは何もなし」的な勇気ある攻撃サッカーを身上としていた。
サッリの攻撃的スタイルは、タイトル獲得に加えてエンターテイメント性が伴わなければ満足できないチェルシーのオーナー、ロマン・アブラモビッチの嗜好と一致する。