ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「本命フランスは間違いない」
決勝&準決勝をトルシエが分析。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2018/07/13 17:30
若く、才能ある新戦力に溢れている今のフランス代表。1998年の自国開催以来となるW杯優勝を目指す。
隣国同士の兄弟対決を制したのは兄の方。
「今日の勝利は誰も予想しないものだった。誰もが、ベルギーがフランスに大きな問題を与えると思っていた。
しかし隣国同士の兄弟対決を制したのは兄の方だった。
弟が存分に力を発揮できなかったのは、少しフランスを意識しすぎていたかも知れないし、コンプレックスもあったかも知れない。そんな印象を受けた。
メルテンスの投入が効果的で、彼が素晴らしいクロスを味方に送った。ただ、ルカクがトップコンディションから程遠く、違いを作り出せるいつもの彼をベルギーは欠いていた。
フランスは静かだが力強かった。グループがひとつになってプレーし、ひとつになって守り、攻めたから勝ち得た結果だった。このチームには見事なまでの統一性を感じる。今、彼らに不可能なことは何もないように思える。決勝にも自信を持って到達した。
相手がイングランドでもクロアチアでも、フランスが世界チャンピオンとなるだろう。
フランス優位は間違いなく、もちろん試合前に勝った気になっても始まらないがタイトルに大きく近づいた。
これまでやってきた優れた仕事の結果であり、努力が報われた結果だ。ディディエ・デシャンは素晴らしいグループを築きあげた」
「フランスは敢えてベルギーにボールを委ねた」
――前半の途中からフランスは、カウンターアタックでベルギーよりも多くのチャンスを作り出していました。
「フランスは敢えてベルギーにボールを委ねた。だから最初の20分はベルギーがボールを支配したが、それはフランスの極めて知的な戦略だったのだと思う。
試合の進め方も洗練されていた。
自分から仕掛けようとせず、プレーでベルギーを上回ろうともしなかった。それができないことをよく分かっていたからだ。だから注意深く相手の攻撃を待ち、ベルギーが攻めてきたときに小さなナイフを彼らに突きたてた。
得点はベルギーが最も得意とするセットプレーから生まれた。ウムティティがフェライニに競り勝って決勝点を決めた。
ベルギーの能力の高さは論をまたない。しかし彼らはどうして1点も決められなかったのか……本物の才能と哲学を持つ、攻撃に関しては世界最高の選手たちがだ」