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なでしこ猶本光、ドイツ移籍の覚悟。
尊敬する安藤梢からの教えを胸に。
text by
日々野真理Mari Hibino
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2018/07/10 11:30
24歳でドイツ移籍を選択した猶本光。先輩・安藤梢がドイツに渡ったのは27歳の時だった。
選手、人間としてもタフになるはず。
自身も、'09年にドイツに渡って8シーズン、ブンデスリーガの最前線で活躍をしてきた。日本とドイツの両方を知り、それぞれの魅力も厳しさも知り尽くしている先駆者も、「今なら」と太鼓判を押す。
「実は、以前の光は、私と一緒のトレーニングメニューをこなせませんでした。でも最近は、私よりも1本でも多くやる、倒れこむくらいまで走るなど、追い込めるメンタルも身についてきました。実際にドイツでどれだけできるかは行ってみないと分かりません。激しい当たりなど、その場でしかわからない壁に直面すると思います。
何より、誰も自分のことを知らない中に入って、自分を認めさせ信頼を得ていかなければいけません。ゼロから自分で切り開いていかなくてはいけない世界です。それを乗り越えることで、精神的にも強くなり、サッカー選手としても、1人の人間としてもタフになるはず。光の成長を楽しみにしています」
「目標はW杯、五輪で優勝すること」
猶本は移籍先のフライブルクの試合を映像でチェックし、新天地でのプレーを心待ちにしている。当然不安もあるが、何よりそれを上回る覚悟が彼女の支えになっている。
「ドイツは、パワーやスピード、展開の速さはどのチームもあるのですが、フライブルクはそれに加えて、3人目の動きで崩すプレーがあるし、前の選手にアイデアをもった選手が多く、得点シーンもおもしろい。MFとしては、自分の良さも生かせるなと、楽しみにしています。
'12年の移籍は若かったこともあり、“やってやるぞ”と楽しみしかありませんでしたが、今回は違う。言葉も文化も違って想像できないことへの不安もありますが、次のステップに行くためには、進まなければならない道だと思っています。私にとってドイツに行くという事自体が目標ではなく、目標を達成するための過程です。自分はまだまだ成長しなくてはいけないことに変わりはありません。
目標は、日本女子代表として、W杯、五輪で優勝すること。そして欧州チャンピオンズリーグでも活躍できるような選手になりたいと思っています。一発勝負の舞台でも自分の力を出せるようになりたい。そのために、何より大事なのは日々の積み重ねです。目標にたどりつけるように、努力を続けていきたいと思います」
いよいよドイツへと旅立つ時が来た。その先に見える景色はどんなものなのか。
本当の勝負はここから始まる。
自らへの期待と覚悟、そして応援してくれた多くの人への感謝の気持ちとともに、羽ばたこうとしている猶本光。「自分でも想像できなかった自分」と出会い、世界で光り輝く姿が見られることを楽しみにしていたい。