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なでしこ猶本光、ドイツ移籍の覚悟。
尊敬する安藤梢からの教えを胸に。
posted2018/07/10 11:30
text by
日々野真理Mari Hibino
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
「いってきます!!」
終始笑顔を輝かせた猶本光。そこに涙はなかった。
およそ6年半過ごした浦和レッズレディースから、ドイツのSCフライブルクに移籍を決めた。7月8日、浦和でのラストゲーム後に開催された移籍セレモニーでは、「背中を押してくれてありがとうございます。6年前には、今の自分になれるとは想像していませんでした。これからは、今の自分には想像できないような自分に成長したいと思います」と、サポーターへの感謝のメッセージを送った。
節目、節目ではいつも涙を見せてきた猶本だが、今回は涙ではなく、笑顔でセレモニーを締めくくった。「泣かなかったね」と声をかけると、「自分でもびっくり」といたずらっぽく笑った。輝かせた笑顔は成長の証であり、未来への希望にあふれたものだった。
U-20W杯からずっと抱えていた思い。
「いつかドイツでプレーをしたい」
彼女がそう思ったきっかけは、世界トップとの差を思い知らされた2012年のU-20女子W杯だった。3位に終わり、悔し涙を流しながら優勝セレモニーを見つめていた。その時に感じた悔しさこそが、ドイツ行きを決意させた一番の理由だ。
「あの時は、すぐに相手にスピードで追いつかれてしまい、ドリブルができないからパスで逃げるしかありませんでした。身体を当ててもずらされてしまうから、コンタクトを避け、当たらないようにする。そんなプレーばかりしていました。それまでは、日本は技術と判断の速さが武器だし、それで勝てると思っていました。実際にU-17W杯でもそれで準優勝することができたし、それでいいと……。
でも、上の世代になると実際は違った。多くのことを変えていかないと世界で戦える選手にはなれないのだと思い知らされたのです。そこからいずれドイツに行きたいと思っていました。先輩たちから話も聞いていたし、欧州チャンピオンズリーグ出場のチャンスもありますからね」