濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
狂気と流血のデスマッチで「生きる」。
竹田誠志と木高イサミの人生ドラマ。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2018/06/26 16:55
死闘の後、リング上で竹田誠志に深々と頭を下げて退場していった木高イサミ。
「デスマッチはいろんな頭を使ってやるもの」
狂いに狂って、血を流すだけ流して、その上で最後に待っていたのはスピーディかつテクニカルなクライマックスだ。
イサミがクラシカルな固め技ヨーロピアン・クラッチから顔面に蹴り。必殺技の勇脚・斬を防がれても連打をやめなかった。
竹田はドラゴン・スープレックス、蛍光灯ごと蹴り上げるヒザ、そしてオリジナルの投げ技リバースUクラッシュ改で7度目の防衛を決めた。両者が見せた切り返しとたたみかけは、彼らのデスマッチが凶器に頼りきったものではないことを物語っていた。試合後の竹田は言った。
「俺のデスマッチは止まらないデスマッチでありハイスピードなデスマッチ。プラス、強さや格闘色もある。いろんな頭を使ってやるものだから」
やはり、デスマッチでも問われるのは“プロレス頭”なのだ。どんなアイテム(凶器)を用意するか。それをどう使い、どう見せるか。それにもちろん、どんな“技”を使うのか。殴り合って血を流せば名勝負になるわけではない。
「今の竹田誠志があるのだって、木高イサミのおかげだ」
デスマッチにもドラマがある。デスマッチだから求められる頭脳がある。
知力も体力も使い切って、ふと見るとコーナーにイスがあったから、イサミはそれに座って話し始めた。『あしたのジョー』最終回、最終ページの姿勢だ。燃え尽きていたけれど、それでも言葉は溢れ出た。
「プロレスリングBASARAという団体(と、それを作った今の自分)は、下手したらお前がいなかったら存在しなかったかもしれない。大日本プロレス、デスマッチヘビー級、そして竹田誠志、本当にありがとうございました!」
深々と頭を下げてリングを降りたイサミに、竹田は「この人の性格、よく知ってるよ。こうやっていいとこ持ってくんだ」と苦笑いしつつ「今の竹田誠志があるのだって、木高イサミのおかげだ」と握手を求めた。デスマッチにも、清々しいノーサイドはあり得る。