野球クロスロードBACK NUMBER
楽天で育成落ち、手術を経て一軍へ。
久保裕也「今が一番野球が楽しい」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2018/05/19 11:00
久保裕也は福岡県生まれ。沖学園高から東海大を経て'02年ドラフト自由枠で巨人入団。5月5日に支配下登録され、背番号は「91」。
こんな笑顔で野球をやれてなかった。
「野球ができる喜び。それだけです」
2017年に楽天のユニフォームに袖を通してから、久保は頻繁に前向きな言葉を発する。
本人いわく「人見知りするタイプなんで、できるだけ人前では話したくないんですよ」と自嘲してはいるものの、自分が知らない同姓同名のサッカー選手の質問に対しても真摯に応えてくれる生真面目さが、久保にはある。
だから、その喜びをできるだけ言葉で表現したいのだろう。それが、久保にできる楽天への恩返しのひとつなのかもしれない。
「今が一番楽しい。こんなに笑顔で野球をやれていたことって、今までなかったんです。これまで、いろんな経験をさせてもらいましたからね。そういうことが、楽天に来て活かされているのかなって思っています」
紆余曲折。言葉で表現するのは簡単だ。しかし、本当の意味でそれを理解できているのは、経験し、心の痛みを知る本人のみだ。久保も艱難辛苦を味わってきた。
テスト入団で受け入れてもらえたから。
クローザーを任されていた巨人時代、慢性的な痛みがあった股関節にメスを入れてから、パフォーマンスは下降線をたどっていった。'15年にチームの構想から外れ、翌年はDeNAでプレーしたが結果を残せず、1年で戦力外通告を受けた。
「テストを受けさせてもらえるまで、野球がまともにできる環境じゃなかったですから」
五里霧中のなかテスト入団という形で自分を受け入れてもらえたからこそ、久保は野球を続けられることに喜びを感じているし、精いっぱい楽天で力を尽くそうと心から誓える。
移籍後初勝利を飾った'17年7月23日のオリックス戦で、久保はしみじみ語っていた。
「巨人に入団してからは、シーズンで一生懸命に投げて白星を手にできてきたわけですけど、この勝ちはそれとは全然違いますね。テストで拾ってもらって、また野球を続けさせてもらえて、一軍の舞台で投げさせてもらえて。一生思い出に残る白星です」
同年9月に右手の血行不良で一軍登録を抹消されたが、27試合に投げ3勝、6ホールド、防御率3.60は、巨人時代の'11年に20セーブをマークして以来の好成績だった。