ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
日本にいれば勝てるとしても……。
池田勇太は米国挑戦を諦めない。
posted2018/03/31 07:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
「自分を、殺したいです」
これほど過激な反省の弁を聞くことはほとんどない。
昨年8月、ノースカロライナ州で行われたメジャー最終戦・全米プロ選手権。松山英樹が優勝争いを演じていた裏で、池田勇太は体に充満する怒りを抑えて、そう吐き出した。
去る2017年。池田は出場した4大メジャーすべてで予選落ちした。マスターズも、全米オープンも、カットラインに1打が届かなかった。
合間を縫ってスポット参戦した米ツアーでも、最高成績はザ・プレーヤーズ選手権での22位。前年の「日本ツアー賞金王」という看板を引っ提げ、意気揚々と海を渡ってきた男にとっては、屈辱的な結果と言えた。
もう這い上がれないと思えるほどドン底に叩き落されれば、気持ちはかえって開き直れたかもしれない。
日本では勝てる、海外では……。
ただ、約半年間に及ぶ海外中心のスケジュールを終え、日本に帰国してからの特筆すべき戦いぶりが、事をすっきりと割り切れる運びにはさせなかった。国内ツアー“復帰初戦”となった8月末のKBCオーガスタから、秋にANAオープン、そして日本オープンと3勝をマーク。結局、賞金王争いにも顔を出してランキング4位で終えた。
宮里優作、小平智の激しい賞金王レース、そして今年4月のマスターズ出場権の争いがクローズアップされたこともあり、昨年末の池田の周辺は静かだったが、松山英樹に次ぐ世界ランクで早々に2年連続のオーガスタ行きを決めたのは、彼に他ならなかった。
海外での惨憺たる成績、日本国内での輝き。コントラストが鮮明な現実はかえって、池田の心情を逆なでするものかもしれない。
「日本で好成績を出して、世界ランクを上げることは簡単なこと。海外でプレーしてランキングを上げることを突き詰めないといけない。『日本に帰って、またランキング上げてこっちに来ました』の繰り返し……それじゃ意味がないんです」