青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER

石川遼は、強い心でボールを飛ばす。 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byAkira Sugiyama

posted2009/05/12 13:00

石川遼は、強い心でボールを飛ばす。<Number Web> photograph by Akira Sugiyama

 石川遼の魅力って何だろう?

 今月5日に行われた日本ジュニアゴルフ協会のイベントは、そのことを考える上で非常に有意義なものだった。

 石川は大会のゲストとして来場し、女子中学生と9ホールをラウンドした。その石川の後ろをたくさんの小学生ゴルファーが、お兄ちゃんを慕うようにヒョコヒョコとついて回った。

 彼らは石川がドライバーを構えるたびに、「マン振りして!」とおねだりする。マン振りとは全力でのスイングを意味するゴルフ界の俗語である。頑張ってリクエストに応えていた石川だが、途中で普段通りのスイングをすると、すぐに見透かされてしまった。

「今マン振りしましたか?」

「うっ、うん……今のは80、90%かな」

「あー、そうなんだ(笑)」

子供たちの夢を実現し、今度は夢を与える立場へ。

 石川も小学生の頃はトーナメント会場で見たジャンボ尾崎や川岸良兼の飛距離に圧倒されたという。石川を見る小学生ゴルファーの興味もサインや写真より、迫力あるドライバーショットが見たいという1点に集中していたのだった。

「僕も子供のころにいろんな選手のドライバーショットを見てびっくりさせられた。そういう役割がもしかすると今の僕にも求められてるのかなって」

 ツアー初優勝を飾った時からドライバーは石川の最大の拠り所だった。ワイドスタンスでねじ切れんばかりの勢いで体を回転させ、300ヤードのビッグドライブを見せる。15歳の高校1年生だったが、その弾道に光るものがあったからこそ、単なるアイドル的な人気以上の興味、関心を呼んだ。

 プロになれば1打に予選落ちの恐怖がちらつき、賞金の額も大きく左右される。無邪気にフルスイングしてばかりいられないのが当然だ。しかし石川自身、この日の無邪気な子供たちの言葉で、自らの長所にあらためて気づかされたようだった。大先輩のジャンボ尾崎や中嶋常幸らのアドバイスに目を輝かせて聞き入る石川と、子供たちの言葉にさえ熱心に耳を傾ける石川。そのどちらも、素直で強い心を持つ石川らしい姿なのである。

ドライバーの飛距離アップと、さらなる夢。

「ドライバーの飛距離はプロゴルファーとして一番大切なもの。僕もこれからのジュニアゴルファーに負けないよう、いろんなコースで思い切りドライバーを振っていきたい。もっと飛ばせるはずだと目標を高く持って、さらに練習を重ねたいですね」

 史上最年少での賞金1億円突破や17歳でのマスターズ出場といった功績も十分に立派だろう。しかし、何がゴルファー・石川遼の魅力かというと……その答えは小学生たちが教えてくれたように思う。

 シーズンはまだ始まったばかり。石川はトーナメントでの経験を通じてそのゴルファーとしての魅力をこれからどんなふうに磨き上げていくのだろう? このコラムでは、喜び、苦しみ、成長する彼の姿とその本音を伝えていきたい。

石川遼

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