ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
日本にいれば勝てるとしても……。
池田勇太は米国挑戦を諦めない。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2018/03/31 07:00
日本では勝てる、アメリカでは勝てない、というまさに世界との狭間で池田勇太はもがいている。
ゴルフ界の若大将であり、泣き虫。
突きつけられた状況が身に沁みる。正直な気持ちを吐露したのは、再び米国でスポット参戦を始めたこの春先のことだった。
アマチュア時代から注目を集め、東北福祉大卒業前の2007年にプロ転向。日本プロ選手権で初勝利を飾った2009年に4勝を飾り、翌'10年も4勝。瞬く間にトッププロへの階段を上った。
'13年からは3季にわたって選手会長を務め上げながら、'09年から昨季までゼロ勝に終わったシーズンは一度もなく、勝利数は19に達した。
早いうちに「ゴルフ界の若大将」なんていうニックネームを授かり、'16年にはリオデジャネイロ五輪にも出場。順風満帆に事を成してきたようなゴルフ人生だが、「このままじゃいけない」という思いは年々、心の奥底に根を張り巡らせてきた。
昭和の風情を醸し、肩で風を切って歩く姿が目立つ一方で、池田勇太は“泣き虫”だ。
敗れて泣き、勝って泣き。鼻持ちならない言葉を発する半面、感情の起伏が大きく、キャリアの節目にはいつも涙が付き添った。
涙を流すような舞台ができていない。
最近はどうだろう。
「試合で心の底から泣いたこと……うーん、あったかなあ」と視線は宙を舞う。
「勝ち負けは抜きにして、それくらい自分を奮い立たせて、成し遂げたとか、やり切ったとか、そういうのがないんだと思う。結局、そういう舞台を自分で作れていない」
国内で不動の地位を、さらに強固にしていく手段ももちろんある。けれど、その立ち位置では満足できない自分がいる。
「今のオレの気持ちは……『日本に心あらず』なんですよ。オレの心はここにある。やっぱり、こっちだな……と思う。本当にこっちでやりたい。ホントに」
米国で、目の前に広がる世界最高レベルのフィールドに自分を置きたい気持ちは、日々大きくなっている。
海外での、米国での彼は、日本にいる時の様子よりも着飾ることなく、少し謙虚に見える。そんな心持ちは、ゴルフに向き合う姿勢に変化をもたらしているようでもある。