サッカー日本代表 激闘日誌BACK NUMBER
フォトグラファー赤木真二が撮った激闘の瞬間
posted2018/03/30 10:00
text by
赤木真二Shinji Akagi
photograph by
Shinji Akagi
アジアカップ日本大会決勝(広島広域公園陸上競技場)
日本代表 1-0 サウジアラビア
プロサッカーリーグ「Jリーグ」が開幕する前年、1992年秋のこと。サッカーの機運は高まれど、代表チームの実力を確信するには戦績が伴わなかった長ーく暗い歴史の、その終焉がようやく見えた時のお話です。
日本代表の指揮官に就任したオランダ人、ハンス・オフト氏は徹底的に基本を説き、メディアに対しても明快な言葉で対応してきました。もしサッカー流行語大賞という賞が存在したならば、この年の大賞はオフト氏の発した「アイコンタクト」だったことでしょう。
カズから高木、初のアジア王者への一撃。
監督が目指すシンプルなサッカーで日本代表はアジアカップのグループリーグを勝ち上がり、準決勝で中国に競り勝ち、名実共にアジアナンバー1であったサウジアラビアとの決勝に駒を進めました。
広島広域公園陸上競技場(現エディオンスタジアム広島)は開催国のタイトル奪取を後押しする6万の大観衆で埋まり、撮影者は400mmレンズを脇に置いて「ゴールシーン狙い」と腹を括りました。180mmレンズで、その時を待ったのです。はたして、左サイド三浦知良の右足からインカーブで蹴られたセンターリングは、ゴール正面で待ち受ける高木琢也の胸に収まり、その落ち際に一蹴されたボールはゴールに突き刺さりました。1-0。
この勝利は日本代表にアジアカップ初優勝をもたらし、長く続いた代表戦の成績不振を断ち切りました。超えられなかったアジアの壁を乗り越える値千金の「一勝」となったことは間違いありません。