スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
イチローとマリナーズの再挑戦。
古巣でのリスタートを期待する。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2018/03/10 11:00
マリナーズ復帰会見、チームは「WELCOME HOME」の文字でイチローを迎え入れた。
思い出すのはグリフィー復帰のケース。
ここでだれしも思い出すのは、ケン・グリフィー・ジュニアのケースだろう。グリフィーは、1989年(19歳)から'99年までマリナーズに在籍し、レッズ(8年4カ月)とホワイトソックス(2カ月)を経て、39歳の'09年にマリナーズへ復帰した。
だが、結果は厳しかった。'09年は117試合に出場して387打数83安打、19本塁打。'10年は33試合に出場して(5月31日が最後のゲーム)98打数18安打、本塁打ゼロ。通算本塁打=630本、通算安打=2781本の大打者だっただけに、急激な衰えを見るのはやるせない思いだった。
イチローは、大リーグ生活17年間で、2636試合に出場してきた(グリフィーはマリナーズ復帰前までに2521試合)。これは、エイドリアン・ベルトレ(2814試合)に次いで現役第2位の数字だ。通算安打数は3080本。もちろん現役第1位で(2位はベルトレの3048本)、グリフィーの2680本(復帰前まで)をかなり引き離している。
得点は1415(現役3位。1位はアルバート・プーホルス)対1612、総塁打数は3985(現役4位。1位はプーホルス)対5092。本塁打数は117本対611本と大差がつくが、盗塁数は逆に、509(現役2位。1位はホゼ・レイエス)対184とイチローが断然多い。数字が近いのは、試合数と得点数の2部門だけだ。
イチローは同じ轍を踏まないだろう。
だが聞くところによると、マリナーズのファンは、イチローがグリフィーの轍を踏むのではないかと危惧しているらしい。
結論からいおう。彼はグリフィーのように急激な没落を迎えないと思う。
もちろん、44歳という年齢は無視できないが、イチローは「パワー」よりも「スピード」で勝負し、「スピード」よりも「知性」で勝負する選手だ。そしてもちろん、スピードはパワーに比べて衰えが遅いし、知性はスピードよりもさらに衰えが遅い。知恵や経験は、筋力や視力の衰えをカバーできる力を持つ。