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鹿島復権への相棒は最強の芝生。
構想6年、ターフプロジェクトって?
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/03/08 17:00
2017シーズンは最終節でJ1優勝を逃した鹿島。タイトル奪還へ、ピッチも最高の環境で待つ。
構想6年、MLBやNFLを参考にした芝生。
今季より鹿島アントラーズは、構想から6年をかけて開発した新品種のスポーツターフを採用した。スポーツターフとは運動用地に植える芝のこと。南アフリカ原産の「シーショア・パスパラム改良型」で塩害に強く、1951年にオーストラリアで発表された品種の改良版。海沿いの公園やゴルフ場で使用されてきたもので、“塩を嫌わない芝”の採用だ。
「カシマスタジアムは海沿いなので、一番に考えなければならないのが塩害対策です。芝が最も進んでいるアメリカで、鹿嶋市と同じ海岸沿いにあるMLBのシアトル・マリナーズやNFLのマイアミ・ドルフィンズのスタジアムの環境を参考にしました。ピッチの日なた、日陰など3カ所で実験を繰り返し、やっと正式に新たな品種の決定に至ったのです」
芝の業界では、ゴルフがナンバーワンとされ、それに野球やサッカー、アメフトが続く。国としてはアメリカが先進国とされる。広い国土に南から北まで様々な気候風土があるため、多数の症例が生まれるからだ。
この25年と真逆、夏芝だけで戦う決断。
これまでカシマスタジアムは、冬芝といわれる寒地型の芝だけでやりくりしていたが、今季から新たに開発した暖地型の夏芝だけで1年を戦うことを決断した。
この決断は、25年間続けてきたことの逆をいく、大きな決断だった。
'18年3月2日、鹿島アントラーズは、「ターフプロジェクト」としての事業展開を発表した。事の始まりは、'12年より芝の成長を促進するLED照射システム「BRIGHTURF」をソニービジネスソリューション、セキシン電機、信州大学とともに、開発に取り組むことを発表したときからだった。「BRIGHTURF」は、'16年から実際に導入開始。そして今回、年間常緑化のために新たな養生技術であるピッチ保温シートを独自に開発し、短い納期でターフを張り替えるビッグロール工法を確立させたことを発表した。
これによって、何が可能となったのか。
端的にいえば、短期間で芝を張り替える技術を得たことにより、ピッチの常緑化とスタジアム稼働率向上につながるということだ。