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五輪初代女王・高木菜那に聞いた。
マススタート必勝法、ありますか?
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA
posted2018/03/02 11:00
マススタート決勝、中団でレースを進める高木。駆け引きの存在こそが、この競技の醍醐味だ。
高木美帆、佐藤、押切も実績を残した。
平昌五輪での日本は、1回戦で佐藤綾乃(高崎健康福祉大学)が転倒者に巻き込まれた不運な形で転倒し、レース続行が不可能になった。決勝進出は高木菜那1人となった時点で「メダルは厳しいかもしれない」というムードも少なからずあった。その中での金メダル。孤軍奮闘となった決勝で高木菜那が見せた滑りには、とてつもない価値があったのだ。
日本のスピードスケート界には韓国と違ってショートトラック出身選手は少ない。その中で高木菜那が初代チャンピオンの座を射止めることができたのはなぜか。
筆者は、マススタートがW杯に登場した当初から多くの選手たちが意欲的に取り組んできたことも、高木菜那の金メダルを後押しすることになったと感じている。この4年間で世界選手権やW杯の女子マススタートで表彰台に上がった選手は、高木菜那だけではない。佐藤綾乃、押切美沙紀、高木美帆もメダルを獲得してきた。
「私たちでマススタートを広めたい」
筆者が最初にマススタートの魅力を聞いたのは高木美帆だった。丁寧に説明してくれた。
「唯一の“対人競技”で、何があるかわからないというドキドキ感と、スピードが出ている状況で最も内側のコースに切れ込んで行く恐怖感もある。駆け引きもすごく大事。どこで誰の後ろに入るのか、どのタイミングで仕掛けるか。
それに、個人種目は自分のことだけに集中するのですが、マススタートはいろいろなことを想定しなくてはいけないし、臨機応変な対応も必要。すごく頭を使うので疲れるんですよ。ルールを知ってもらうともっと面白いと思うので、私たち選手でマススタートを広めたいという気持ちもあります」
彼女がそう話していた通り、他の選手たちも、
「何が起こるか分からない」
「ボディコンタクトがあるのがスリリング」
「誰がどのタイミングでどこで出てくるかが分からないのも含めて、駆け引きの面白さがある」
と口々に魅力を語っていた。