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五輪初代女王・高木菜那に聞いた。
マススタート必勝法、ありますか? 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA

posted2018/03/02 11:00

五輪初代女王・高木菜那に聞いた。マススタート必勝法、ありますか?<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto/JMPA

マススタート決勝、中団でレースを進める高木。駆け引きの存在こそが、この競技の醍醐味だ。

ショートトラック出身選手が優位。

 マススタートで勝つための要素は多岐にわたる。まずはレース前。出場選手の力量や性格を元に、展開を予想する頭脳が必要になる。レースが始まれば、前の選手を風よけに使うなどすることで、いかに足を使わずに距離を滑っていくかが重要。また、密集の中でのポジション取りでは接触も多いので、ぶつかられてもバランスを崩さない柔軟性と強靱さも求められる。

 そして、ラスト。ここではスピードを出した状態でリンクの最も内側のきついコーナーを回る技術が不可欠だ。最終のストレートは長距離を滑った後の末脚勝負。最後は激しいデッドヒートからつま先の差で勝敗が分かれることも多い。

 小さなカーブを周るテクニックの必要性や接触という要素があるため、ショートトラック出身の選手にとってメリットの多い種目であるとも言われている。韓国にはショートトラック出身選手が多く、平昌五輪で銀メダルだったキム・ボルムもその1人だった。

「アタッカー」と「スプリンター」。

 個人種目でありながら、団体戦の様相もあるところもマススタートの特徴だ。

 決勝に2選手が進んだ国は2人が1組になって戦略的にレースを運べるため、メダルの確率がグンと上がる。この場合の2人の役割分担は、1人が「アタッカー」と呼ばれ、レースを作ったり、前の選手を追ったりする役目。もう1人が「スプリンター」と呼ばれ、アタッカーのサポートを最大限に生かしながら余力を残した状態で最終コーナーおよびストレートでの勝負を挑む役目である。

 昨年2月に今回と同じ江陵オーバルで行なわれた世界距離別選手権。日本からは高木菜那と高木美帆が出場し、高木菜那が銀メダルに輝いた(優勝は平昌五輪銀メダルのキム・ボルム)。

 レースでは高木美帆が「アタッカー」になってラスト2周をつくり、高木菜那が「スプリンター」となって抜け出すという作戦を採った。高木美帆は最終周で転倒したが、そこまでアシストを受けていた高木菜那が最後のスプリント勝負で2位になったという展開だった。

 このとき高木菜那はこう語っていた。

「マススタートはチーム種目。1人では絶対に勝てない。各国最大2人出られる中で、2人でどうやってメダルを取っていくかという戦略が必要になる。メダルを取った選手が評価されがちだが、『アタッカー』が前を追いかけてくれたり、レースをつくってくれるお陰で、自分が最後まで足をためて、ラスト勝負ができる。2人いてのマススタートだと思う」

【次ページ】 高木美帆、佐藤、押切も実績を残した。

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