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学生時代は先発、プロではリリーフ。
投手の転向は今後も不可避なのか。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2018/02/24 17:00

学生時代は先発、プロではリリーフ。投手の転向は今後も不可避なのか。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

東海学園大学時代は2年生からエースだった田島慎二。2017年は34セーブ、いまや立派な守護神である。

“まあまあ”の投手で強豪と戦うために。

 中村監督は、学生球界でも有数といわれる理論派だ。それも、“オリジナリティ”なら右に出る者なしとも言われる。

「ウチが獲れるレベルっていうと、おおざっぱな言い方して、せいぜい“まあまあ”のピッチャーですよ。そのまあまあのピッチャーを押し立てて、全国の強豪に立ち向かっていかなくてはならない時に、じゃあどうするか? まあまあでも1イニングだったら、全力をその1イニングに集中させたら、何とか抑えられるんじゃないか……。そこが、ウチの“投手リレー”の発想の原点でしたね」

 ダメだと判断したら、打者1人でも降板。逆に1イニングをピシャリと抑えても、4人目の打者にはやられるかもしれない。好調に見えても、イニングをまたがせることはめったになかった。

 こういう戦法をなりふり構わず展開してくるチームは、他にない。相手打線は初めての経験に面食らい、狙い球を絞れずに、打つというより“打たされる”の連続で凡打を積み重ねていった。

 投手陣全員が「リリーフ投手」。

 日本文理大独自のこの戦法の精神は、今でも引き継がれている。

プロでリリーフとして成功する条件。

 そんな日本文理大のスタイルについて、こんな持論を語ってくれた指導者もいる。

「結局リリーフっていうのは、中村監督の挙げる投手の条件のうちの、どれかが飛び抜けていて、どれかが欠落している。そういうピッチャーが、プロでもリリーフとして成功しているんじゃないですかね。学生時代は長所がよければ、短所に少々目をつぶっても先発に使いますし、エースにもなれますからね。能力に“出っぱり引っ込み”があっても、そこまで目立たない。それが、レベルが上がることで浮き彫りになってくる。そこで君は先発、あなたはリリーフ……と選別が行なわれるんじゃないですか」

 かと思えば、こんな“逆説”を唱える指導者の方もおられる。

「今プロ野球のリリーフで活躍している投手たちなら、先発ローテーションでも絶対活躍できると私は考えてます。150キロ前後のスピード、空振りの三振を奪える勝負球、3球で打者を追い込めるコントロール……。

 勝負度胸もそうですし、それ以上に『オレは毎日投げるんだ! ここで、オレが投げずに誰が投げるんだ!』という強烈な意志と、それを1年間継続できる心身の体力ですね。これぐらいの条件がないと、今のプロ野球でリリーフの仕事はできない。それぐらいのピッチャーなら、ローテーションで十分やれると思いますよ」

【次ページ】 いつかリリーフから揃える時代が来るかも?

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