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具志堅「世界を獲るには勇気が必要」
14連続KOの比嘉大吾は沖縄を背負う。 

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2018/01/23 11:30

具志堅「世界を獲るには勇気が必要」14連続KOの比嘉大吾は沖縄を背負う。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

比嘉大吾が世界王者になった時、具志堅用高はリングで涙を見せた。それもまた、バラエティ番組では決して見せない表情だった。

具志堅「世界を獲るにはリングの中で勇気がないと」

 厳しいトレーニングを積み重ねた比嘉は、2014年6月17日にセーンゲン・サックナロン(タイ)戦で1回50秒でKO勝ちし、見事デビュー戦を飾った。その後も11連続KO勝利。デビューから約3年経った2017年5月20日に、WBC世界フライ級王者だったファン・エルナンデス(メキシコ)に6回TKO勝を収め、王座を獲得。

 同年10月には14戦連続KO勝利で初の防衛にも成功した。

 比嘉の強さの秘密を師匠・具志堅はこう語る。

「世界を獲るにはリングの中で勇気がないとダメなんです」

 ボクサーはテクニックも大事だが、最後はハート、ファイティングスピリッツの優れ者が勝つ、と。

「高校の3年間、365日、日曜だけは休んでいたけど、月~土は1日も休まずに走っていたんですよ。それに、小学校の頃は父親に野球で厳しく鍛えられた。そういったところで身体能力やハングリーさは養われたのかなと思います」

沖縄を代表する気持ちは「ありますよ。そこは絶対に」。

 2月4日に那覇市の県立武道館で、WBC世界フライ級9位で元世界2階級制覇王者モイセス・フエンテスと2度目の防衛戦が決定している。

「いつか沖縄で試合がしたいと思っていた」と待ち望んでいた地元での開催。

 沖縄での世界戦は、1981年3月に所属ジムの元WBA世界ライトフライ級王者、師匠の具志堅が行って以来、実に37年ぶりとなる。

 さらに、この試合は同郷の大先輩でもある元WBC世界スーパーライト級王者・浜田剛史らが持つ15連続KO勝利の日本タイ記録もかかっている。注目の一戦だ。

「これまで14連続KOで勝っていて、あと1つで並ぶし、あと2つ勝てば日本記録を更新する。同じ沖縄の先輩が持っている記録だからこそ超えたいですよね。会長のボクシングスタイルはもちろん好きなんですが、沖縄出身のボクサーってみんなああいうスタイルなんですよ。なんていうか、沖縄から東京に出てきて何かを背負っているっていう感じというか。そういうところが好きで」

 沖縄を代表しているという気持ちは? と尋ねると間髪入れずに力強い言葉が返ってきた。

「もちろん、ありますよ。そこは絶対に」

 沖縄での過去の世界戦3試合は、いずれも日本選手が敗れている。昨年世界王者となった直後の宮古島の凱旋パレードでは3000人もの市民が集まるなど地元の期待は大きく、2度目の防衛戦ではこれまで以上に相当な重圧ものしかかってくるだろう。

 しかし、周りの声は気にしない。比嘉はひたすら勝利へ向け邁進していく。

 Number944号「世界を殴れ」では、比嘉大吾と具志堅用高会長の師弟が語るオキナワンファイターの誇りをぜひお読みください。
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