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年末ボクシングは何故こうなった?
不在の井岡、絶対の井上、他は乱世。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2017/12/29 08:00

年末ボクシングは何故こうなった?不在の井岡、絶対の井上、他は乱世。<Number Web> photograph by AFLO

9月の世界戦も、井上尚弥は圧倒的だった。パウンドフォーパウンド上位の拳はだてじゃない。

2011年から大みそか興行を成功させてきたTBS。

 TBSは2011年から大みそか興行を本格的に中継しており、その主役は常に3階級制覇王者の井岡一翔(井岡)だった。井岡はその実力もさることながら「数字のとれる」ボクサーで、同局にとって井岡抜きの大みそか興行は考えられなかったと言えるだろう。

 その井岡の防衛戦に、田口と田中恒成(畑中)によるWBA・WBO世界ライト・フライ級王座統一戦を加える、というのが夏の段階でTBSが描いたプランだ。同局は'12年に井岡と八重樫東(大橋)による国内初の2団体統一戦を仕掛けて好評を博した実績があり、満を持して国内2例目の統一戦で勝負しようという算段だった。

 これまでにWBA王座を6度防衛している田口の試合は、タイトル獲得からテレビ東京が放映してきたが、TBSは「統一戦は全国ネットで」と強気な交渉で田口サイドを口説く。東海ローカルだった田中は、9月の防衛戦で全国放送デビューさせる周到ぶりだ。

数字のとれるボクサー、井岡一翔の不在。

 一方、内山高志という柱が引退し、田口まで取られてしまったテレビ東京は、6年続いた大みそか興行からの撤退を余儀なくされた。

 これでTBSはホクホクのはずだったが、好事魔多し。あろうことか、田中が9月の試合に勝利しながら眼窩底骨折を患って戦線を離脱。ジムとの確執がうわさされる井岡はトレーニングから遠ざかり、復帰のめどが立たないまま。2つの大きな柱を失い、TBS関係者は頭を抱えてしまった。

 こうして当初のプランは水泡に帰したが、したたかに計画を練り直し、トリプル世界タイトルマッチを成立させてみせるあたりは、コンスタントにボクシング中継を続けてきた局のプライドかもしれない。

 田口の統一戦はなくなったかと思いきや、5月に八重樫を初回TKOに下した記憶も新しいIBF王者のメリンドの招へいに成功。強靭なハートとスタミナを持つ両者の対戦は、純粋に勝負という視点でファンを引き付けてやまない好カードと言えるだろう。

【次ページ】 「雑草vs.エリート」はいつの時代も愛される。

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