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工藤監督は、今宮健太の話がしたい。
右打ちをやめ、取り戻した打の意識。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/11/28 11:00

工藤監督は、今宮健太の話がしたい。右打ちをやめ、取り戻した打の意識。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

今季の今宮は出塁率.317、長打率.422、OPS.739とチームへの貢献度が高い打撃を見せた。

最高の守備に比べて打撃が弱点だったが……。

 今宮がベストナインを受賞したのは3年ぶり2度目だった。常勝チームの“不動の遊撃手”として5年連続5度目のゴールデングラブ賞に輝いた名手ではあるが、ベストナインにはなかなか手が届かなかった。

 やはり弱点はバッティング。しかし、今季はひと味もふた味も違って見えた。打率.264、14本塁打、64打点、15盗塁。いずれも自己最高の成績を残した。

 現在のプロ野球は、2番打者にも攻撃力を求められる時代だ。

 今季の前半戦で躍進したイーグルスは「2番・ペゲーロ」が大いに機能したことがチームに勢いをつけた。逆にペゲーロが機能しなくなった後半戦は大失速。いかにチームの屋台骨だったかが明らかになった。

 また、日本シリーズを戦ったベイスターズにしても今季21本塁打と一発のある梶谷隆幸が2番に座ったことで、打線がより強力なものとなっていた。

捨てきれない長打への思いが口に出ることも。

 今宮は昨年の10発に続き、2年連続で二桁本塁打を達成した。また、三塁打7本はパ・リーグ2位、二塁打27本は同5位タイの成績だった。

 かつて輝きを放っていた“スラッガー”今宮が、その姿を取り戻しつつある。

 高校通算62発の実績を引っ提げてプロ入りしたが、入団してすぐの頃から「本塁打は捨てる」と公言してきた。しかし、それは本心だったのだろうか。

 身長172cmの体躯なのにプロで長距離砲を目指すなど無謀だ、という周囲の声に押し切られているようにも映った。実際、公式なインタビューなどでは「ホームランは求めない」と言いながらも、捨てきれない長打への思いを、親しい人には口に出してしまうことがあった。

【次ページ】 川相昌弘の世界記録を超えるペースで犠打を量産。

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