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全巡目から1人ずつ選んでみると……。
「妄想ひとりドラフト」1位は誰に? 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/11/06 07:00

全巡目から1人ずつ選んでみると……。「妄想ひとりドラフト」1位は誰に?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

清原和博を超える1大会6本塁打でスターになったが、中村奨成は守備も「超」がつく一流なのだ。

安田は向こう10年4番サードを託せる看板選手。

 安田尚憲三塁手は、間違いのない打者と見ている。

 言い換えると、誰がお手本にしてもよい打者。もっと言い換えると、どんな指導者でも手を差し伸べられるタイプ。安田選手のスイングで打てば、誰でも一定の結果が得られる。そんな、バッティングのセオリーにのっとったスイングスタイルの持ち主だ。

 しかも、打球方向がいい。左打者で左中間、左翼方向へ飛距離を出せて、打球の勢いも引っぱった時とそう変わらない。フェアゾーン90度のどの方向へも同じような飛距離を出せるのが「長距離打者」の定義だと、私は考えている。そこに、ピタッとはまるのが安田選手だ。

 しかも、今のプロ野球にいない「大型三塁手」。“野球の華”としての役割をしっかり担えるフィールディングの連動性と、強烈な打球を止められる屈強さと柔軟性も兼備している。

 向こう10年間、「4番サード」の看板選手として、球場にファンを惹きつけられる稀有な存在。なんとも捨てがたい大器なのだ。

剛腕、大型三塁手はいても、いい捕手が本当にいない。

 しかし“ウチの球団”は、今年のドラフト1位に広陵高・中村奨成捕手を選んだ。

 なぜか? 「捕手」だからだ。

“剛腕”は来年、再来年、まだ現れる。たとえば来年なら、私には東洋大・甲斐野央投手(3年・187cm80kg・右投左打)にその兆しが見える。

 大型三塁手も今はなかなか出なくなったが、来年はそこに大阪桐蔭高・山田健太三塁手(2年・183cm83kg・右投右打)が見えているし、サイズは小さくても早稲田実業高・野村大樹選手(2年・172cm81kg・右投右打)だって、その卓越したバッティング技術と鉄砲肩でその任を立派に果たせると見ている。

 しかし、「捕手」はいない。近年、本当に魅力的な捕手が出てこない。大胆に言い切ってしまえば、少なくとも向こう3年は、高校にも大学にも社会人にも、中村奨成クラスの捕手の逸材は現れないという見通しが、私にはある。

 こんなことを言われて悔しくないのか、高校、大学のキャッチャーたち! 奮起せよ!

 捕手の逸材は、いる時に獲っておかなくてはならない。「中村奨成」という快男児がいる時に獲っておかなくて、いつ誰を獲るというのか。

 やはり、あまり知られていない話だが、彼はこの夏まで筋トレをしていない。筋トレをしていない非力な状態で甲子園での“6弾”なら、バッティングの伸びしろを楽しみにしない手はない。

【次ページ】 バッティング以上に、ディフェンスこそが中村の本質。

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