マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
戦力外選手たちの思い出とエール。
彼らは確かに「幸せ者」だった。
posted2017/10/06 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
10月に入って、いよいよペナントレースも大詰めになってきたが、一方でプロ野球の10月は“惜別”の時でもある。
2日はオリックスから、3日は千葉ロッテ、ソフトバンク、中日、ヤクルトの4球団から合計37人の「戦力外通告選手」が発表された。
京都大学から初めてのプロ野球選手として大注目の末にプロ入りした田中英祐投手(千葉ロッテ)も3年間のファーム生活を終えてユニフォームにひと区切りつけ、2014年の中日1位指名・野村亮介投手は社会人・三菱日立パワーシステムズ横浜当時、その“全力投球”をブルペンで受けた投手だ。両サイド低めへの見事なコントロールが、今も記憶に新しい。
健大高崎高から俊足を買われて千葉ロッテに進んだ脇本直人は、外野手として3年間奮闘したが、群馬の“スーパー中学生”だった時、その快速球を受けたことがある。
弟・大地と共に同じ3日に兄弟そろって戦力外通告を受ける悲運に遭ったヤクルト・星野雄大捕手。
ある雑誌の「ドラフト隠し玉」企画で取材に伺ったのもなつかしい。独立リーグ・香川オリーブガイナーズの寮は、建設中止になった5階建てのマンションだった。電気の配線もむき出し、エレベーターも動いていない建物の中で、「リードと配球とは違う」をテーマに熱く語り合った5年前が、ついこの間のようだ。
通告の4日前に9回を打者27人で封じた男も……。
発表された戦力外通告選手たちの名前を見て、アッと驚いた。
ヤクルトの戦力外通告の中に、「投手・徳山武陽」の名があったからだ。
通告のあった4日前、徳山投手はイースタンリーグの日本ハム戦に先発。9回を3安打10奪三振無四球で完封し、許した3人の走者も2つの併殺と牽制死1つ……。結局、“打者27人”で封じるすばらしいピッチングをやってのけていた。