マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
戦力外選手たちの思い出とエール。
彼らは確かに「幸せ者」だった。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/10/06 11:30
ヤクルト・徳山武陽がプロ初勝利を上げたのは2014年9月3日のことだった。2015年は39試合に登板し、日本シリーズにも名を連ねた。
彼らは確かに「幸せ者」であった。
その翌日、早稲田実業高・清宮幸太郎選手のもとには、プロ野球10球団の使者たちが、ドラフトを控えたチーム事情の説明のために訪れた。
そして、4球団が戦力外通告を行なった3日、DeNAのルーキー・細川成也外野手が「プロ初打席初ホームラン」を決勝3ランで飾り、2年目・綾部翔投手も初めての一軍マウンドで先発、5回を無失点に抑えて初勝利。
初回、細川成也に一生忘れない3ランを打たれながら、2回以降をノーヒットノーランに抑えた中日・笠原祥太郎投手だって、昨秋のドラフト4位でプロに進んだルーキー・サウスポーなのだ。
集まり、散じる季節。
それが、プロ野球の“10月”なのかもしれない。
もしかしたら、大きな成果は挙げられなかったのかもしれないけれど、それでも、途方もなく小さな確率をくぐり抜け、青春の何年間かをプロ野球選手としてプレーできた「幸せ者」であったことを決して忘れずに、確かにその胸にしまって……。
新たな世界での“未来”に、どうか幸あらんことを。