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田臥勇太とライアン・ロシターの縁。
2人の出会いで生まれた相乗効果。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYuki Suenaga
posted2017/09/28 10:30
Bリーグ初代王者に輝いた昨季、ロシターは1試合平均17.3得点13.3リバウンドを記録し、リバウンド王を獲得した。
ロシター「彼はいつもディフェンスより2歩先を見てる」
「それまで日本のバスケットボールのことは知らなくて、勇太のことも、彼と電話で話した後に調べた。彼が日本からNBAに入ったのは本当にすごいことだ。10数年前、まだ今のようにツイッターやYouTubeも出てくる前で、今ほど(自分のプレーを)見てもらう機会がない中だったわけだからね」
アメリカで育った自分でも手が届かなかったNBAに、アメリカ国外出身の選手が入ることがどれだけ大変なことなのか、同じようにそこを目指した経験があるからこそわかることだった。それだけリスペクトする田臥のことは、話し始めると止まらない。
「勇太からはすごく色々なことを学んだ。最初にここに来たときのことを考えると、僕もパスやボールハンドリングはかなり上達したと思う。それは勇太がどうプレーするか、彼がどうコートを見ているかを見て、そこから学んだからだ。彼はいつもディフェンスより2歩先を見てプレーしている。今はこの選手があいているけれど、あと1秒待てば別の選手がノーマークになるとかね。勇太から、そういったことを学んできた」
田臥も、ロシターには全幅の信頼を寄せている。
「練習への取り組み方や、チームに対しての要求のしかた、チームに対しての責任感が本当にすばらしい。このチームが大事にしている、泥臭く気持ちで戦う部分というのを、彼も本当に大事にしてくれているのが嬉しいですね」
チームメイトとして共に戦う上で、何を大切にするのか、その価値観が同じというのは、大事なことだ。
ダンクも嬉しいが、勝負を決めるのは地味な部分。
ロシターは言う。
「僕はどれだけ成功しても、選手として自信過剰や傲慢になったことはないし、できる限り力を尽くしてプレーしている。いつも上達しよう、チームをよくしようと努めていて、どんなことでも自分がやることではないと思ったりすることはない。25点差の試合でもルーズボールに飛び込むことがチームにとってプラスになるならやる。
そういったことは、このチームでは勇太から始まることでもあるんだ。40点勝っていても、誰かが気を抜いたプレーをしたら、彼は一番に、『まだ試合は終わっていないぞ。集中していこう』と言う。単にその試合の勝敗だけでなく、さらに先を見て戦っている。
僕も勇太も、誰かがノールックパスをしたり、ダンクを決めるのを見るのは嬉しいけれど、と同時に、試合を決めるのは床にルーズボールで飛び込んだり、パスにつながるようなパスだということもわかっている。結局のところ、僕らは勝つことだけを考えている。昨シーズンのチームでは、僕と勇太が2人ともそれほど点を取らなくても大差で勝ったこともあった。僕らは、ベンチで『もっとシュートを打ちたい』と言ったりすることもない。『ブレックスが勝ってよかった』と、それだけなんだ。僕らはどちらも勝つことを大事に考えているし、究極の目標が何なのかわかっている」