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マカべッシュが語るダルビッシュ。
東北高校野球部が1つになる日。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byGetty Images
posted2017/08/10 11:30
ニューヨーク・ヤンキース戦にて。今やチームメイトとなった前田健太とダグアウト内で。
「俺みたいな奴がキャプテンで本当に申し訳なかった」
卒業してダルビッシュはプロ野球選手に、真壁は大学を経て社会人になった。
オフシーズンになると2人はよくともに食事をした。その時、ダルビッシュが決まって言うことがあった。
「あいつは会うたびに『俺みたいな奴がキャプテンで本当に申し訳なかった』って言っていたんですよ。意外とそういうところは気にしいなんで……。普段、他のことは全然気にしないのに、そういう、どうでもいいことだけは気にするタイプなんです(笑)。だから、当時の仲間にも会えなかったんですよ、あいつは……」
ただ、そんなダルビッシュに最近、変化が出てきたという。それは大リーグ移籍で、アメリカに渡った後くらいからだという。
「最近ちょっと変わってきていて。3、4年くらい前からですかね。これまで会ったことのない昔の仲間に会ったり。多分、あいつの中で小さなことになったんじゃないですか。自分の中で。家族ができて、子供ができて、ずっと悩んでいたものが過去のものになって。あいつは今、もっと重要なことを考えているんじゃないですかね」
卒業後、それぞれの道でそれぞれ悩み、苦しんできた。
真壁は同じ投手であるダルビッシュをライバルと思ったことが一度もないという。投げ方も、変化球も、教わったことはないし、盗もうとも思わなかった。それでも彼にもらったものが今の自分を形成しているという。
「あいつは昔から賛否が服を着て歩いているような人間でした。ただ、そういう唯一無二の存在と3年間を過ごせたことは財産というか。僕からすればダルビッシュからもらったもの、刺激を受けたものというのは全てにおいてです。それが僕の全てというか……」
真壁は卒業後、大学、社会人と野球をやっていく中である意味の“地獄”を見た。
そうやって、もがいて、悩んで、時が経過していく中でダルビッシュ有と自分についてあらためて気付いたことがある。そして、その瞬間、ずっと抱えてきた葛藤が消えたのだという――。