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ロシアW杯は安価で快適な予感が。
コンフェデでモスクワの人情に感動。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2017/07/06 11:00
2018年ロシアW杯の大会マスコットであるオオカミの「ザビワカ」君。大会メインスタジアムはまだ建設中(拡大工事中)である。
ブラジル人、イラン人、そしてロシア人は親切!
ロシアの人たちが見せる親切さ、ホスピタリティの高さも印象深かった。
これまで世界で最も親切な国民は、ブラジル人とイラン人だと思っていた。
日本、とりわけサッカー界では、セルジオ越後、ラモス瑠偉両氏のインパクトが強烈なおかげで、ブラジル人はアグレッシブでエネルギッシュという印象を抱きがちだが、日常生活で接するブラジル人は極めて穏やかで温かい。
イラン人も同じで、メディアを通してのイメージから集団だと攻撃的に見える彼らが、ひとりひとりはとても親切で親しみやすい。テヘランの街中を歩いていて少しでも困ったそぶりを見せると、必ず誰かが寄って来て「どうしたのか?」と声をかけてくる。地下鉄の駅で運賃表とにらめっこしていると、「どこまで行くのか?」と尋ねてくる。ブラジルでもイランでも、そうした人たちに幾度となく助けられた。
ロシア人が30分以上もホテル探しを手伝ってくれた。
ロシア人――特にモスクワっ子は大都市の人間らしくもう少しクールなのかと思っていた。
たしかに彼らは自分たちから積極的に寄って来ることはない。だが、こちらからものを尋ねると、ブラジル人やイラン人に負けず劣らず丁寧に対応してくれるのだった。
サンクトペテルブルクからモスクワまで列車で移動し、地下鉄を乗り継いで宿泊するホテルの最寄り駅まで着いたはいいが、肝心のホテルが見つからない。最初に道を聞いた30歳前後の男性は、携帯のGPSを頼りに近くまで案内してくれた。それでもわからずウロウロしながら、今度は車のボンネットに書類を広げて仕事しているキャリアウーマン風の女性に尋ねた。
すると彼女は、英語をまったく話さないにもかかわらず、仕事そっちのけで一緒になって探してくれる。途中から、全身にタトゥーとピアスを施した若い女性も加わり、3人で30分ちかくかけてようやくたどり着くことができたのは、表に看板も何もない普通のアパートビルの3階だけを使って営業しているホテルだった。表通りが全面工事中であったのも、見つかりにくさに拍車をかけた。感謝の言葉を述べると、まったく赤の他人である女性ふたりは、何ごともなかったかのようにそれぞれの道に分かれ去って行った。