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大家友和、引退と特殊なキャリア。
「生涯、野球からは離れない」 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byKyodo News

posted2017/06/20 11:00

大家友和、引退と特殊なキャリア。「生涯、野球からは離れない」<Number Web> photograph by Kyodo News

2011年シーズン限りで横浜を退団してからも、BCリーグでのプレーやナックルボーラーへの転向と挑戦を続けてきた。

トレード先のエクスポズで1年目から13勝の大活躍。

 トレード期限が過ぎたわずか数分後、地元メディアに対応したダン・ドュケットGM(当時。現オリオールズ編成本部長)が背を向けた途端、今もボストンのラジオ局で活躍している名物記者ジョニー・ミラーが当時、こう言ったのをよく覚えている。

「有望な若手を簡単に諦めるこの球団のやり方には、本当に我慢がならない。オオカはきっと、エクスポズで先発投手として成功するだろう」

 ミラーの言う通り、若手主体のエクスポズは翌年から大家を先発ローテーションに固定。大家自身が1年目から「最初は遊び。練習では段々変化するようになっていた」というツーシーム・ファストボールを武器にチーム最多の13勝を記録したことで、彼を主戦投手の1人に位置付けた。

 余談になるが、ツーシーム・ファストボールは黒田博樹、田中将大(ヤンキース)両投手が武器としたことで、フロントドアなどと今でこそ日本でも知られるようになったが、大家はある意味、その先駆者として2001年から本格的に実戦投入していた。彼が後にカット・ファストボールやチェンジアップ、ナックルボールにまで手を広げるようになったのも自然な流れに思える。

先発数、投球イニングは日本人3位。

 大家の特異性は冒頭の通り、その記録によく表れている。ダルビッシュ有投手が今季、日本人史上最速の109試合目でメジャー通算50勝を達成した。それは野茂英雄、黒田博樹、岩隈久志、松坂大輔、そして大家友和に次ぐ、日本人6人目だった。また、大家は178試合に先発しているが、それは日本人では過去最多の野茂の318、2位黒田の211に次ぐ3位である。1070.0投球回も野茂の1976.1、黒田の1319.0に次ぐ3位で、日本人でメジャーで1000イニング以上投げたのは今のところ、この3人しか存在しない。

 特筆すべきは、メジャーリーグに長くいた証とも言える大家のそれらの記録が、2004年に打球を右前腕部に当てて複雑骨折したり、2006年に右肩を傷めて長期の故障者リスト入りしたりといった時期を挟んで記録されたという事実だろう。

 近年は肘の側副靭帯を再生するためのトミー・ジョン手術を受ける日本人が増えているが、バラバラになった骨を繋ぎ留めておくために、大家の右腕には今もチタン合金のプレートとボルトが埋め込まれている。

【次ページ】 「生涯、野球というスポーツから離れることはない」

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