フランス・フットボール通信BACK NUMBER
世界で最もセレブな街のサッカー事情。
ASモナコの躍進と、その国民の悲願。
text by
オリビエ・ボサールOlivier Bossard
photograph byFrederic Mons
posted2017/05/15 08:00
ASモナコのグラウンドで練習に励む若い選手たち。ここからモナコのスター選手が生まれる。
モナコのやり方でサッカーを愛す……という意味。
'04年にASMがチャンピオンズリーグ決勝に進出した際の中心選手のひとりであったジベは、現在はクラブのU-15チームを指導しながら、自身のプロコーチライセンスの取得を準備している。彼はこう続ける。
「モナコは世界の他のどことも異なっている。まず生活環境が違うから、たとえ試合に負けた後でも、誰もクラブや選手を直接非難したりしない。モナコには、王家があってASMがある。どちらも絶対的な存在で、たとえば子供たちにモナコのことを語って聞かせると、彼らは目を輝かせながら大人たちの話に聞き入る。別に(ライバルの)ニースをけなす必要はない。モナコにはモナコだけのプレステージがあるのだから。モナコの人々は、自分たちのやり方でサッカーを愛しているんだ」
レストランの主人はASモナコの元選手にして三軍の監督。
ルイ2世スタジアムのすぐ傍に、『レストラン・アルデント』の看板は掲げられている。ベンジャミン・メンディが毎日のようにパスタを食べに通い、ファルカオも何度か訪れている知る人ぞ知る店である。
主人のグレッグ・カンピは、笑顔を絶やすことなく訪れる客を受け入れる。
モナコに生まれ、ミッドフィールダーとしてASMからリール、バリ(イタリア)、モントリオール・インパクト(カナダ)などを渡り歩いてから、レストランの主人となったカンピは、ASMの三軍を率いてすでに6年がたとうとしている。
「この街は凄いよ。月曜に店を開けるたびに、常連たちが週末の試合のことを話しかけてくるからね」
フランス7部リーグに所属する彼のチームを、地域の人々はわがことのように語り、熱いまなざしを向ける。チームを応援するスタンドには、バレル・ジェルマン(ASMのストライカー)の姿が見られ、モナコ大公であるアルベール2世も、ベンチに座り飛び入りでチームに加わったルドビク・ジュリやガエル・ジベ、キャメル・メリエムらにエールを送っている。
「彼らは報酬をまったく受け取らない。楽しみながら仕事をして、若い選手たちに自分たちの経験を伝えようとしている。素晴らしいだろう」(カンピ)