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2000安打より200勝が難しすぎ!
エース級のMLB流出で絶滅の危機。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2017/05/10 11:30

2000安打より200勝が難しすぎ!エース級のMLB流出で絶滅の危機。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

昨季限りで引退した黒田は日米通算200勝を達成した。今後NPBのみでの200勝達成を果たす投手は現れるのだろうか。

'08年の山本昌を最後に、8年間出てきていない。

 1970年代を境に達成者の数が逆転している。2010年代は、1980年代を抜いて最多の「2000本安打者」を出すことがほぼ確実だ。それに比べて200勝投手は、2008年の山本昌を最後に8年間出ていない。現役投手の状況を見ても、当分、200勝投手は出てきそうにない。まさに野球界の「絶滅危惧種」と言っていいだろう。

 投手の分業が進むとともにローテーションが確立されて、先発投手の登板数は昭和の時代と比べてはるかに少なくなった。これが「200勝」を絶滅危惧種にした大きな要因だが、それに加えてNPBのエース級投手が、働き盛りにMLBに移籍するようになったことも大きい。

 MLBに渡った主要な日本人先発投手の日米の勝利数を見てみよう(※は現役。現役は5月7日時点)。

野茂英雄 NPB:78勝、MLB:123勝
伊良部秀輝 NPB:72勝、MLB:34勝
吉井理人 NPB:89勝、MLB:32勝
石井一久 NPB:143勝、MLB:39勝
※上原浩治 NPB:112勝、MLB:20勝
高橋尚成 NPB:79勝、MLB:14勝
藪恵壹 NPB:84勝、MLB:7勝
黒田博樹 NPB:124勝、MLB:79勝
川上憲伸 NPB:117勝、MLB:8勝
※松坂大輔 NPB:108勝、MLB:56勝
※井川慶 NPB:93勝、MLB:2勝
※ダルビッシュ有 NPB:93勝、MLB:49勝
※岩隈久志 NPB:107勝、MLB:63勝
※田中将大 NPB:99勝、MLB:43勝
※和田毅 NPB:124勝、MLB:5勝 
※前田健太 NPB:97勝、MLB:18勝

上原や高橋のように、MLBで救援に転向したケースも。

 最近のNPBのエース級投手は100勝前後を挙げた脂の乗り切った段階でMLBに渡る。野茂英雄、黒田博樹のようにMLBでも活躍し、日米通算で200勝を挙げた投手もいるが、そこまで活躍できずに終わった投手も多い。またNPBに復帰した投手もいて、中には上原浩治や高橋尚成のように、MLBで救援投手になったケースもある。

 これらの投手は、NPBでそのまま投げ続けていれば、200勝に到達した可能性が大きかったのではないかと思われる。NPBのエース級は、日本で実績を挙げるとMLBへとステップアップするのがお決まりのコースになったのだ。年俸が桁違いだし、よりレベルの高いステージで自分の力を試したいとも思うからこそだ。

【次ページ】 「200勝、名球会」から「MLB」が最大の目標に。

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