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久保建英がJ1でも「できること」。
なぜ彼は自分を見失わないのか。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/05/09 11:30
10代のアスリートが強烈に注目されがちな日本にあって、久保もまたその一人だが、周囲の過熱をよそに本人は着実に力を育んでいる。
久保が見せた「できること」はまだまだある。
彼が見せた「できること」はまだある。
J1のピッチでも違和感なくプレーできたのは、判断のミスがないからだ。パスを受けて前を向くべき場面で、久保は迷わずターンする。ドリブルで仕掛けるべき場面なら、自ら敵陣へ切り込んでいく。チームメイトにも観衆にも「なぜ?」という疑問符を抱かせない。それもまた、久保が年齢を飛び越えてプレーできる要因である。
U-20日本代表での久保に、話題を移そう。
20歳以下のタレントが集う世界の舞台で、このレフティーがポテンシャルを解放する土台は固まってきたと言える。
内山監督が採用する4-4-2のシステムで、前線の軸となるのは小川航基である。183センチの高さを持つターゲットマンは、所属するジュビロ磐田で出場機会を増やしている。4月26日のルヴァンカップ第3節でハットトリックを達成し、翌週の第4節でもゴールネットを揺らした。リーグ戦でもここまで5試合に出場している。ピッチに立っている時間こそ短いが、ベンチ入りのメンバーに選ばれることさえ大きなハードルだった昨年に比べれば、明らかに立場は好転している。
小川だけでなく、堂安、三好、遠藤らも成長している。
昨年よりもゲームに絡めているのは、小川だけではない。サガン鳥栖でプロ1年目を過ごす18歳の田川亨介は、ここまで7試合に出場して1ゴールをマークしている。田川と同じFW登録の岩崎悠人(京都サンガ)も、プロ1年目の今季をチームの主力として過ごしている。
2列目を担うタレントも頼もしい。堂安律(ガンバ大阪)、三好康児(川崎フロンターレ)、遠藤渓太(横浜F・マリノス)らが、所属クラブでのプレー時間を増やしている。U-20W杯出場をつかんだ昨秋からおよそ7カ月を経て、それぞれの選手がスケールアップを果たしてきた。
チームメイトの変化は、久保にも好影響を及ぼす。昨秋までは自分のプレーに精いっぱいだった選手が、Jリーグでの経験を通して技術的、精神的に余白を持てるようになる。周囲の選手を生かすことに思考を巡らす余裕を、持つことができるようになっているのだ。