野球善哉BACK NUMBER
ローテ以上、エース未満のジレンマ。
菊池雄星に必要な「勝負所の100%」。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/04/20 07:00
開幕戦では快投を見せた菊池。持っている実力は球界屈指なだけに、要所を締めるスタイルも身につける必要がある。
内川に同じ球種を投げて2本の本塁打を浴びた。
まずはソフトバンク戦である。
菊池は2回に内川聖一の本塁打と味方のエラーなどで3失点した。それでもストレートは150kmを計測し、持ち味のスライダー、昨季から武器になったカーブ、昨オフに習得したフォークを上手くちりばめた。すると4、5回に味方打線が反撃して1点差に詰め寄った。エースが粘る中で、打線が奮起してもぎ取った2得点。今年のライオンズには投打のつながりがあり、チーム状態の良さを感じさせた。
ところが踏ん張りどころの6回表、菊池は過ちを繰り返してしまう。内川に対して1打席目と同じ球種、コースへの投げミスで左翼スタンドに放り込まれ、この日2本目の本塁打を許した。
1点差に詰め寄ってからの一発は点差以上に大きなダメージがあり、結局試合は2-4のまま敗れた。
味方が援護した直後に奪われる悪癖が再び。
続くロッテ戦でも似たようなことがあった。
0-0の投手戦で推移した6回裏1死から井口資仁に四球を与えると、続く井上晴哉にセンター前に運ばれて1死一、三塁。細谷圭はサードゴロに打ち取ったが、併殺崩れとなり先制を許した。その直後の7回表、主砲の中村剛也が本塁打を放ち同点としたが、菊池はまた粘れなかった。7回裏、先頭の田村龍弘に中前安打を浴びると、1死二塁から伊志嶺翔大に中前適時打を浴び、勝ち越されたのだ。
試合は9回2死からメヒアの劇的な逆転2ランで西武が逆転勝ちしたが、菊池にはエースとしての物足りなさが残る。
なぜ菊池は味方が援護した直後に、点を取られてしまうのか。それが菊池にとって現状での最大の課題である。
これについて本人と正捕手の炭谷銀仁朗に尋ねてみると、意外にも2人は「結果どうこうではない」と口を揃えた。