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ローテ以上、エース未満のジレンマ。
菊池雄星に必要な「勝負所の100%」。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2017/04/20 07:00

ローテ以上、エース未満のジレンマ。菊池雄星に必要な「勝負所の100%」。<Number Web> photograph by Kyodo News

開幕戦では快投を見せた菊池。持っている実力は球界屈指なだけに、要所を締めるスタイルも身につける必要がある。

リードする炭谷が菊池に求めるエース像とは?

 その上で、炭谷は菊池に求めるエース像をこう話した。

「今年はフォークを覚えましたけど、フォークやストレートがどうだったとかではないんです。相手エースとの投げ合いが多くなる中で、いい時もあれば、悪いときもある。その状況でもどういう意識を持って投げているかが大事なんです。

 たとえばロッテ戦で先制された場面では、井上にセンター前を打たれてチャンスを広げられた。打たれる直前の球は、スライダーが外にいってファールにされたんですけど、続いてインコースにスライダーを要求したら、甘くなって打たれた。雄星からしたら、ボール先行にしたくなかったからと思うけど、捕手としては“ボールでもいい”という意思で要求している。もしボールであってもインコースを見せられれば、後に生きているわけですからね。次の回にしても、中村さんのホームランで追いついて先頭打者を切りたいところで、田村に出塁された。その意識を持って投げているかどうかです」

「岸さんも涌井さんが抜けたとき、すぐには……」

 フォアボールを怖がって投げるような投手であっては、エースにはなれない。だからこそ1球に対する意識を磨いていくことでこそ、真のエースになれると炭谷は見ている。さらに続ける。

「岸(孝之)さんの時もそうだったんです。涌井(秀章)さんが抜けて、岸さんがエースと言われる立場になりましたけど、すぐにうまくいったわけでもなかった。いかに気持ちの持ち方をレベルアップするか、にかかっていると思います。エースとしての雄星という雰囲気が出るようになれば、もっと楽に投げられるようになると思います。そうすることで、競った試合展開で勝っていける投手になるんじゃないでしょうか」

 菊池が一気にステップを進めるタイプではないことは、これまでの成績が物語っている。何しろ2ケタ勝利を挙げるまでに、プロ入りから7年かかっているのだから。

 とはいえそれは力量不足ではなく、彼自身の性質といえるかもしれない。感性が鋭く、周囲の声に聴き耳を立ててしまう性格の持ち主であるぶん、成長スピードが比較的緩い印象を受ける。それは裏を返せば、一歩ずつ必ず昇りつめていくタイプなのだ。

【次ページ】 本人も「勝負所の場面を100%で抑えられていない」。

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