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楽天・茂木栄五郎ってなんなんだ!
学生時代の愛される逸話と、心臓。
 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2017/04/19 07:00

楽天・茂木栄五郎ってなんなんだ!学生時代の愛される逸話と、心臓。<Number Web> photograph by Kyodo News

昨年は新人ながら、チーム最高打率を記録。グラウンドで目立つ方ではないが、1試合茂木栄五郎だけを見ていたいくらいの選手なのだ。

茂木栄五郎って、いったいなんなんだ。

 そんな昨秋のドラフトの頃。私は茂木選手について聞かれると、こう答えていた。

「超人的な頑張り屋の茂木選手ですから、心身に負担の大きなショートも1年ぐらいはなんとかこなすと思いますよ。でも2年、3年となると、それはいかにもしんどい」

 足腰に抜群の強靭さを持つ反面、足腰の柔軟性という点ではちょっと心配。1年目の奮闘でかなりダメージが来ているはず。

 日本大学・京田陽太(中日2位)、トヨタ自動車・源田壮亮(西武3位)といった、フィールディングに即戦力の実力を持つ遊撃手を楽天は獲得するべき……と発言してきたのは、私にしてみれば、ほとんど“悲鳴”のようなものだった。

 なのに、今季もショートを守り、しかもリードオフマンという新たな任務を負って、なにごともなかったように、快調に3割台をマークしながら、試合を決める快打を放ち続ける茂木栄五郎って、いったいなんなんだ。

怪物という称号は、大谷だけのものじゃない。

 4月4日、パを制覇するにはこの相手をつぶさねば話にならないソフトバンクとの今季初戦。向き合うマウンド上は、今プロ野球で最も“すごいボール”を投げる千賀滉大だ。

 三振とセンターフライの最初の2打席はまるでタイミングが合ってなかったのに、さりげなくバットを短く持って構えた第3打席の初球。

 ボールも2つに割れよ! とばかり強烈にひっぱたく彼一流のスイングから、千賀滉大のスライダーまでもが仙台・コボスタのライト中段へ持っていかれてしまう。

 怪物という称号は、大谷翔平(日本ハム)のような今風のかっこいい選手にこそふさわしいと思っている方も多いかと思うが、茂木栄五郎171センチ75キロ、名前もサイズも、そしてそのマスクも、いかにも昭和の渋い存在に見えているようで、いやいや実際やってのけていることは、実は立派に“怪物”なのだと、心から敬意を表しながら、一方で、くれぐれもご自愛のほどを……と行く末の無事を祈るばかりである。

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