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新戦力OK、試合内容OK、でも6連敗。
大宮が入り込んだ迷宮の正体は何?
posted2017/04/14 08:00
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
負のループに陥るというのは、こういうことを言うのかもしれない。
大宮アルディージャが苦しんでいる。昨シーズンのJ1リーグでクラブ史上最高の5位に躍進したチームが、今シーズンはリーグ開幕から6連敗を喫しているのだ。勝点3はおろか勝点1さえあげていないのは、全18チームで大宮だけである。
J1復帰2シーズン目を迎えるにあたって、チームはマイナーチェンジをはかっていた。'14年から攻撃の作りと仕上げを担い、昨シーズンはチーム最多の11得点をあげた家長昭博が、川崎フロンターレへ移籍した。家長の薫陶を受けて成長してきたドリブラーの泉澤仁も、ガンバ大阪の一員となった。攻撃の看板2枚を、同時に失ったのである。
その一方で、即戦力の獲得に成功した。
清水エスパルスのシンボル的存在だったFW大前元紀を、完全移籍で迎え入れたのだ。パスの出し手にも受け手にもなれるこの27歳に加え、攻撃のポリバレント・プレーヤーとして日本代表の招集経験を持つ長谷川アーリアジャスールもチームに加えた。
彼らふたりだけではない。柏レイソルで才能を開放できずにいた茨田陽生を、ボランチの候補者に加えた。アタッカーのリストには、瀬川祐輔が名を連ねている。大卒ルーキーとしてザスパクサツ群馬に加入し、1年目に13ゴールをあげて大宮へ移籍してくるのは、加入2年目の今季から副キャプテンを務める江坂任に共通する。
2トップの一角でも2列目のサイドでもプレーできる瀬川の適応性も、アジア最終予選の予備登録メンバーに選ばれている江坂と同じだ。
ポジションバランスとして過不足の無い補強は、家長らを失った痛みを感じさせなかった。オフの移籍市場の収支は、悪くないものだった。
チームの方向性も変わっていないのだとしたら……。
チームの方向性も変わっていない。'14年シーズンの途中から采配をふるう渋谷洋樹監督は、就任からほぼ一貫して4-4-2を採用している。2トップがタテ関係になることはあるものの、3バックや3トップには手をつけていない。
GKを含めたディフェンスのメンバーも、バックアップを含めて昨年とほぼ同じだ。長丁場のリーグ戦を戦ううえで土台となる基本戦術と守備は、継続性を保ちながら'17年のシーズンを迎えたのである。
だとすれば、躓きの原因は何なのか。
これが、何とも皮肉なのだ。