考えごとをしていれば、緊張する余地はできない。

　澤田は「漠然とマウンドに立っていると、緊張したり、いらないプレッシャーがかかってくるけど、考えごとをしていたら緊張しないと思うんです。だから自分がやらなきゃいけないことを考えながらマウンドに上がります。そうすればそっちに集中するので、緊張する余地がないと思うので」と言う。

　例えば次の打者への注意点を確認しながらマウンドに上がるなど、頭の中を自分がやるべきことで満たして、不安やマイナス思考を閉め出している。これはスポーツ心理学の観点からも理にかなった方法だ。

　そして、黒木は目を輝かせながらこう話した。

「今は緊張よりも、投げてて“楽しいな”と思えるので。やっとみんなと同じところに立てるんだ、っていう喜びのほうが大きいです」

“みんな”とは、「日の当たるところで育ってきた人たちです」と言って笑った。

「僕は大学2部リーグだったし、高校の時も甲子園とか日の当たる場所には行けなかったから。高校からプロに行きたかったけど、行けなくて、むちゃくちゃ悔しかったですもん」

黒木は150km超の直球で、セットアッパー役に。

　その黒木はオープン戦で5試合に登板。150kmを超える威力のあるストレートは、プロの打者でもなかなか前に飛ばせなかった。「球に力がある」と惚れ込んだ福良淳一監督は、吉田一将や塚原頌平の調子が上がらなかったこともあり、守護神・平野佳寿につなぐ8回を黒木に任せることを決めた。

　プロ初登板は東北楽天との開幕戦、4－4で迎えた延長10回表に訪れた。

　緊迫した場面でのデビューにも、オープン戦と変わらない落ち着いた様子でテンポよく投げ込み、1回を無失点に抑えた。試合後には、「勝つか負けるかの瀬戸際の、ああいうところで最初に投げられてよかった」と言ってのけた。

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