野球善哉BACK NUMBER
安楽智大の232球から4年、今年も……。
WBCの球数制限とセンバツの野放図。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/04/02 08:00
今大会最多の1日で218球を投げた東海大市原望洋の金久保優斗。“熱投”の代償が大きなものにならないことを願うばかりである。
複数投手制は長く野球をやらせたいから。
彼には信念があるという。
「基本的にうちが複数投手制をとっているのは、長く野球をやらせたいという気持ちがあるからです。高校でケガをさせて終わってしまう事態は避けたい。きょうは子どもらの誰もが、光本で行くと思っているはずです」
山口は滋賀県ではオーソドックスなスタイルをとらない指揮官として知られ、新しいことにチャレンジをしてきたそうだ。地元の記者からは「ヤマタツマジック」と呼ばれることもあるという。その指導理念が関係しているのであろう。
福井工大福井は、エース摺石を再試合では1球も投げさせなかった。しかしその理由は、投げることができなかったからだ。再試合のあと、指揮官の大須賀康浩が明かしている。
「(延長15回引き分けとなった試合の)翌日に摺石の状態が良くないということで、理学療法士やトレーナーと確認をとったところ、いまの状態では投げるのは厳しいということでした。最後まで可能性を残して、試合前の練習でキャッチボールをして最終判断をしましたが、本人が投げられないとのことだった」
いわば、手遅れだった。前の試合の時点で、すでに摺石の肩には問題があった。摺石本人が告白する。
「(延長15回引き分けの)試合が終わった時は全然、痛くなかったんです。たぶん、試合ではアドレナリンが出ていたから投げられたのかなと思います。その夜になってから痛み出しました。左腕を少し上げただけで痛む感じです」
三浦に1球も投げさせないという、指揮官の我慢。
福岡大大濠の三浦は、196球完投してから1日を空けての再試合でも登板した。
再試合を終えたときのインタビュースペースで筆者はこんなことを聞いている。
「この2試合で三浦君はよく頑張ったと思います。だから、次の試合は三浦君はお疲れさんと、他の投手で勝負するという考えにはならないですか」
八木啓伸監督は「現時点では考えていない」と否定したが、翌日、三浦は登板しなかった。試合に敗れたとはいえ、三浦に1球も投げさせなかった裏には、指揮官の我慢があったからに他ならない。