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アロンソのホンダ批判は正当なのか。
マクラーレンの車体も問題が山積。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2017/03/24 08:00
バルセロナでの合同テスト中、同僚と話し合うホンダの長谷川総責任者(右)。開幕に向けて厳しい状況を打開できるか。
車体側のトラブルも実は頻発している……。
したがって、「パワーがない」というアロンソの指摘は間違っていない。だが「問題はひとつだけ」という批判には素直にうなずくことはできない。それは私が日本人だからではなく、事実と異なるからだ。
例えば、信頼性に関してのトラブルだ。マクラーレン・ホンダは、8日間の合同テスト期間中、じつに6日なんらかのトラブルに見舞われている。このうち、パワーユニットに関するトラブルは前半の3日で、あとの3日は車体側のトラブルだった。しかし、マクラーレンがトラブルの原因を発表しないため、後半3日のトラブルもホンダが原因だと勘違いされてしまった。
このような状況に、王者メルセデスAMGのあるエンジニアはため息まじりにこう嘆いていた。「どんなにいいマシンでもエンジンがなければ走らない。またどんなにパワーがあるエンジンでも車体がなければ動かない。さらにマシンがいいとエンジンも良くなり、エンジンがパワフルになると車体も良くなる。F1というのは、綱引き合戦のようなもの。車体屋とエンジン屋の呼吸を合わせて綱を引っ張らないと勝てない。チームワークがとても大切だということは、この世界の常識なのに……」
マクラーレンもアロンソも覚悟の変更だったはず。
今回の不協和音の責任の一端は、ホンダが期待を裏切るパワーユニットしか用意できなかったことにあるのは事実だ。しかし、こうなってしまったのは、なにもホンダが昨年から何もしていなかったからではなく、大きな変更を行なったからだということは、マクラーレンもアロンソもわかっているはずではないか。
そして、大変更するという選択をホンダが採った理由も理解しているはずだ。それは、チャンピオンであるメルセデスAMGに追いつくための選択だった。