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勇人と寿人の眼は、まだ死んでない。
J2で実現した8年ぶりの双子対決。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/19 07:00
この日、誰よりも試合に出たかったのは佐藤勇人に違いない。メディアのために道化を演じても、目は死んでいない。
オーラは丸い。でも眼は死んじゃいない。
千葉に復帰してからの7年。勇人はジェフの「新たなスタイル」を探し続け、それを見つけられないもどかしさと悔しさ、自分の無力さに直面して苦しんだ。
しかし今季の千葉は、アルゼンチン人監督フアン エスナイデルの下でオリジナリティに富んだ新たなスタイルを明確に示しつつある。最終ラインを高く保つ3-5-2の生命線はハイプレス。極めてリスキーな戦術だが、この3試合に見る精度の向上は著しい。
現時点での立ち位置はこのスタイルのキープレーヤーであるアンカーの2番手だが、“走るサッカー”は自身の原点。何より、この年齢になっても新しいサッカーを学べることが楽しくて仕方がない。
新しいスタイルを楽しんでいるのは、寿人も同じだ。名古屋への移籍は、「人生で一番悩んだ」末の決断だった。まだやれる。もっと点を取れる。そう信じていたからこそ、風間監督からの「もっと上手くなれる」という言葉に心が躍った。
新天地でも当たり前のようにキャプテンを任された。いつもどおり先頭を走るうちに赤いユニフォームにも慣れた。過去は過去。ストライカーだから、これからの結果で勝負したい。寿人には、ギリギリの危機感をエネルギーに変える特別なパワーがある。
機をうかがい、潜む兄と弟。1年の結末に躍るのはどちらか。
いい大人になった。空気は読める。オーラは丸い。でも、ギラギラした双子の眼は、まだ死んじゃいない。