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勇人と寿人の眼は、まだ死んでない。
J2で実現した8年ぶりの双子対決。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/19 07:00
この日、誰よりも試合に出たかったのは佐藤勇人に違いない。メディアのために道化を演じても、目は死んでいない。
勇人が悔しかったのは、寿人のプレー。
勇人は悔しかった。自分がこの試合に出られなかったこと以上に、寿人が“らしさ”を見せられなかったことが。
「今日の名古屋は、いつかの自分たちを見ているようでしたね。自分たちはその難しさを知っているから、決して嫌味じゃなく『寿人も大変だな』と思いました。もちろん、風間さんがやろうとしているサッカーはほとんどできていなかったと思いますよ。パスを出して、走ってという動きが少なすぎる。全員が足下でパスを受けようとするから、ウチは的を絞りやすかったと思います。
確か、1本ありましたよね。寿人がほぼ完璧な動き出しで裏を狙った瞬間。でも、出し手は足下につけようとした。広島だったら間違いなく裏。あれを合わせるのに、寿人は少し苦労するかも。ただ、それはアイツにとってモチベーションにもなる。
もちろん自分も出場したかったです。ただ、何よりチームが勝ったことが大きいし、昇格候補のライバルからの勝利には勝点3プラスアルファがある。
寿人とピッチに立つこと以上の唯一の喜びは、昇格しかないんでね。それ以上はない。だから何としても昇格したい。名古屋との次の対戦は全く違う試合になると思います。寿人がどう変わるのか楽しみだし、ウチももっとレベルを上げて、とにかく勝ちたい」
寿人「自分がフル出場しなければ……」
もちろん寿人も悔しかった。勇人の指摘どおり、課題は「ゴールに向かうこと」にある。
「前節の岐阜戦もそうだったんですけど、前半から守備に回る時間が長かったし、自分たちのやろうとすること、できるだけボールを保持する時間を長くすることができませんでした。ゴールに向かえていれば、それでいいと思うんです。でも今日もミスが多かったし、ゴールに向かえていない。まずはそこを修正しなきゃいけないですね。
勇人がベンチスタートだったので、自分がフル出場しなければ(同時出場は)厳しいかなと思っていました。でもそれ以上に、今日はジェフに負けたことが悔しい。両親も観に来てくれていたし、久しぶりの兄弟対決ということで、いろいろな人に注目してもらいました。ただ、名古屋のホームでも試合があるので、チームとしていい状態で、お互いに個人としてもいい状態で対戦できるようにしたい。
J1復帰に向けて、ジェフは一番のライバルです。今日はその相手に勝点3を与えてしまったので、どこかで必ず、それを取り返したい。J2は簡単じゃありません。もう1回、しっかりとした覚悟を持ってやらないと」