野球のぼせもんBACK NUMBER
メキシコで“勘違い先発”も何のその。
ホークス五十嵐亮太は心も体も頑丈。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/03/11 08:00
昨季は打ち込まれる場面が目立った五十嵐だが、フォークを再び宝刀にしてセットアッパー返り咲きを狙っている。
メキシコで高橋尚成と勘違いされるアクシデント。
だからオフも休まなかった。昨年はシーズン終了後に単身でメキシコに渡り、ウインターリーグに参戦した。
ところが、海を渡った直後にまさかのアクシデントに見舞われた。それをどこ吹く風と笑い飛ばしたのが、まさに五十嵐の人間性である。
「(メキシコでのチームと)契約をしてGM、監督と初顔合わせの時に『先発で期待している』と言われたんです。彼らは(米大リーグ)メッツ時代にやっていたと聞いているぞ、と言うのでよくよく話してみると完全なる勘違いでした(笑)」
なんと、当時同僚だった高橋尚成と間違われていたというのだ。利き腕は右と左まで違うのに……。
長いイニングを与えられて、実戦での修正が可能に。
だけど、思い通りにいかないこと自体が当たり前なのだ。五十嵐はすぐにその役割を受け入れた。
「結果的にそれが良かった。中継ぎだと1イニングしか投げられない。そうなると投球フォームや変化球などを試すのは難しくなる。長いイニングを投げたことで、たとえば初回ダメでも次の回に修正する機会があったし、良ければ次の回にさらに良くなるための工夫もできた」
チームの期待にも応えてみせた。7試合のうち5試合に先発して防御率1.93。ある試合では8回1安打12奪三振で無失点という快投だった。12月中旬で帰国した際には首脳陣から「大事な戦力だ。年明けのプレーオフまで残ってくれ」と引き止められたという。
「長い回を投げられることが分かったし、(先発の)谷間でもいいから誰もいないときには手を挙げようかな(笑)」