濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
無敗の女王・KANAが負けた……。
それでもKrushが目指す本物の価値。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2017/01/21 08:00
KANA(左)と同い年のヘウヘス(右)は24歳のオランダ人。体格もほとんど同じで、これからも良きライバルとして活躍しそうである。
予想を完全に超えていた、メロニーの強さ。
KANAにとっては最高のお膳立てである。
敵は強ければ強いほど試合は白熱する、つまり観客の満足度が増す。ましてアグレッシブな相手なら、KOも生まれやすい。
だがメロニーのアグレッシブさと勝負根性は予想を完全に超えていた。まさかここまで、と誰もが思ったはずだ。
1ラウンド、的確なタイミングの左ストレートでKANAがダウン。
すかさず立て直してバックブローでダウンを奪い返したまではよかったが、むしろここからがメロニーの真骨頂だった。
夢のまた夢を実現させた新王者メロニー。
2ラウンド以降、KANAがイニシアチブを奪うもメロニーも手数が減らない。
王者の右まぶたはジャブで腫れ上がった。そのことでパンチが見えにくくなっていたのだろうか。
最終3ラウンドにもKANAがダウンしてしまう。判定は3-0。
新王者の誕生となった。
普通、きわどい競り合いで有利なのはホームの選手、つまりKANAのはずである。だが実際に競り勝ったのはメロニーだった。
「日本のことは、これまでマイク(所属ジム会長)からたくさん聞いていたし、いつか試合をしたいと思っていました。しかもメインだなんて本当に嬉しい」
試合2日前の公開練習で、メロニーはそう言っていた。
KANAにとってKrushのメインが夢の舞台なら、メロニーにとっては夢のまた夢。KANAにメインイベンターとしての責任感があったように、彼女にも「絶対にこのチャンスを逃したくない」という思いがあったのではないか。
ただの海外遠征ではない。ここで食っていく、ここでのし上がるという意味では、Krushはメロニーのホームリングでもあったのだ。