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「今一番欲しいのは代表のスタメン」
南野拓実は何に悩み、何を目指すか。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byKiichi Matsumoto
posted2017/01/14 11:30
1月16日で22歳になる南野拓実は、抱えている危機感を隠そうとはしない。上へ行く、という強い意志がそうさせるのだろうか。
監督に直接聞いた「俺には何が必要なのか」。
有言実行。南野はブラジルから直接オーストリアに飛び、ザルツブルクのチーム練習に合流した。しかし、この時点でオーストリアの国内リーグはすでに開幕し、第4節までを消化していた。開幕前のキャンプから連係を深めていたチームに、南野のポジションは用意されていなかった。スタメン出場した第5節マッテルスブルク戦で1ゴール、75分から途中出場した第7節アドミラ・バッカー戦で2ゴールを決め、懸命のアピールを続けたものの、オスカル・ガルシア監督の信頼は得られず、ベンチ暮らしが続くことになった。
ある日の練習後、南野はガルシア監督に直接「試合に出るために、俺には何が必要なのか。監督は俺に、何を求めているのか」と尋ねた。指揮官は、こう答えた。
「タクミの攻撃面での能力、ボールを前に運ぶ技術は認めている。ただし、自陣でボールを奪う回数が少ないし、そういうデータも出ている。今、チームの戦い方としてサイドハーフの選手には、そういうところを求めている。練習から、しっかりと相手に体をぶつけて、チームを助けるプレーを見せてくれ」
守備面の物足りなさはわかる、でも攻撃なら……。
南野本人にとっては、それほど意外な言葉ではなかったと言う。
「監督のイメージは、シンプルだと思うんです。サイドハーフの選手とは、自陣まで下がって体を張るものだと。確かにザルツブルクに行ってからの僕は、シュートブロックする場面だったり、体を投げ出して相手のクロスを防ぐような場面が、試合に出ている選手よりも少なかった。そこで評価されていることについては、納得ができました。逆に言えば、もしも攻撃面でのことを指摘されていたら、納得できなかったと思う。攻撃面だけを考えれば、『試合に出られないはずがない』という自信もありましたから」
これまでも、試合に出られない時期が続けば、監督と直接コミュニケーションを取ることはあった。指揮官からの言葉を受け止め、消化し、黙々とプレーや姿勢でアピールしてきた。
ただし、「変化」を始めた2016年の南野は、それだけでは終わらなかった。指揮官からの指摘に対して、さらに言葉を返した。