プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
新日本プロレス1.4ドーム後の世界。
鈴木軍リターンズ。王者オカダの明暗。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2017/01/06 17:00
10人タッグ戦でオカダ・カズチカのチームが負けた直後のリング上。突如乱入した鈴木軍に絞め落とされるオカダ。
翌日、IWGP王者がリング上で絞め落とされる!
だが、そのオカダが24時間も経たないうちに、すべてを否定されるようにKOされてしまう。
東京ドームの興奮冷めやらぬ1月5日、新日本プロレスの「NEW YEAR DASH!!」、後楽園ホール大会。セミファイナルの10人タッグ戦終了直後のことだった。
オカダにしてみれば、何が現実で何が夢だったのか、戸惑うような出来事だった。実際には、どちらも現実だったのだけれど。
「スズキグン、リターンズ!」
鈴木軍が新日本に戻ってきた。
大将の鈴木みのるは7人の軍団の暴れっぷりをニヤニヤしながら腕組みして通路で眺めていたが、最後に悠々とリングに上がって来てオカダを絞め落とした。
「ここは俺たちのリングだ。お前たちの宝、すべて奪い取ってやるよ」
鈴木はベルトを奪い取り、オカダを踏みつけてアジった。
この日のターゲットはオカダらCHAOSの面々だったが、鈴木軍にとってはすべてが敵だった。大賞男でロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの内藤哲也でも、今はちょっと落ち目だがエースの棚橋弘至でも、だれだってかまわない。
2年間、新日本を離れていた鈴木軍だが、ランス・アーチャー、デイビーボーイ・スミス・ジュニアといった大型外国人は大きな戦力であり、相手にとって脅威になるだろう。
アントニオ猪木を「たいしたことない」と。
鈴木みのるという男は至極変わっている。
新人時代にアントニオ猪木と試合をした後、初対決の感想を聞かれて「たいしたことない」と言ったことがある。このころから憎まれ役だったとも言える。
モーリス・スミスとの格闘技戦では涙を流したが、新日本プロレス、UWF、藤原組、パンクラス、全日本プロレス、ノアと渡り歩いた格闘人生は波乱万丈のやりたい放題。
そのキャリアの中で全日本の三冠王座も、ノアのGHCヘビー級王座も腰にした。鈴木にとって足りないものがあるとすれば、新日本のIWGPヘビー級王座だけということになる。