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市立船橋の武器は高校生らしくなさ。
選手が自ら布陣を変える成熟度。
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![茂野聡士](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/a/90/img_6ace7507de8c83ff56765f7a7f4634197570.jpg)
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byNIKE
posted2016/12/30 08:00
![市立船橋の武器は高校生らしくなさ。選手が自ら布陣を変える成熟度。<Number Web> photograph by NIKE](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/4/a/700/img_4ade4c2f230581e269a386eac49fe78b157244.jpg)
Jリーグ内定が決まった(左から)杉岡、原、高。これまで市船が獲得してきた15個のタイトルを示す星を胸に、高校最後の大舞台に臨む。
3バック→4バックの変更を選手が自主的に判断。
この試合、市船は3バックで試合に入ったが、相手のプレスに後手に回っていると感じた主将の杉岡が、自主的に4バック変更を決断した。
「最初は3バックで相手の攻撃を跳ね返そうとしていたけど、流経さんが前線からパワーをかけてきて、セカンドボールを拾えない状況でした。それは全員が感じたところで(最終ラインから)1枚前に出してセカンドボールを拾おうとなりました」(杉岡)
驚きだったのはシステム変更が朝岡監督からの指示ではなく、ピッチにいる杉岡ら選手たちが自ら考え、指揮官に進言したという点だった。
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当初は3バックの中央にいたMF金子大毅が中盤に上がると、一気にビルドアップの質が高まった。そして後半3分には、セカンドボールを拾った金子がMF太田貴也の決勝点をアシストするという副産物ももたらした。
システム変更で勝利したのは、5月にもあった。
プロ顔負けのゲームプランを披露した市船だが、実はこのシステム変更、流通経済大柏戦が初めてのことではない。
5月8日に行なわれたプレミア第5節、市船は対戦相手の柏レイソルU-18に押される展開となったことで「初めて公式戦で、監督に自分たちから言って変更しました」(杉岡)という。最終的に終盤に挙げた決勝点で3-2の打ち合いを制したことが、ブレイクスルーのきっかけになった。
「その変更自体でうまくいったかはわからないですけど、勝てたので監督にも褒められたというか……『そうやっていい』と言われたので、この試合で自信を持てました」
杉岡と強固な最終ラインを構築する原は「自分たちがしっかりとゲームを感じとって、流れを変えていく力」とも話している。市船イレブンは自らのスキルだけでなく、ピッチ内の状況を冷静に見極める察知能力も磨き上げたことが分かる。その土台はトレーニングを含めて、普段から試合を意識しているからこそだろう。