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則本昂大、3年連続ミスターKの球質。
マー君から引継ぎ損ねている物は?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2016/12/27 07:00
新人から4年連続で2ケタ勝利、しかし敗戦も3年連続で2ケタに乗っている。則本が絶対エースになるためには、勝率の向上が求められている。
プロで3年連続「奪三振王」を獲得するボール。
則本スタイル。
そんな風に表現できるオリジナリティ。
彼にしかできない腕の振りの軌道から、一度右打者の頭のほうに飛んでいって、そこから大きく曲がってストライクになるスライダーは、左打者にも打たれたことがないと笑っていた。
この変化球を、私は勝手に“則本ボール”と命名していた。
その楽天・則本昂大が216三振を奪って、今季もパ・リーグの「奪三振王」を獲得した。2014年から3年連続の“ミスターK”だという。
あのストレートと、あのスライダー。プロに進んで、スライダーのバリエーションも増やしている。
プロで三振がとれるのは、ああいうボールなんだ……。そして、渾身のストレートで打者のスイングの上を通過させてやりたい。そんな意欲。
思い出すのは、田中将大のストレート。
フッと思い浮かんだ場面がある。
2006年・夏、甲子園。
その決勝戦は、早稲田実業高と駒大苫小牧高の一騎打ちとなった。
引き分け再試合にまで及んだ2試合で、早稲田実業・斎藤佑樹、駒大苫小牧・田中将大はお互い一歩も退かない“鬼”の投球を続け、あわせて24イニング、最後の最後まで勝敗のゆくえ知れない緊迫の熱投を繰り返した。
タテのスライダーとツーシーム。“沈む系”を駆使して、駒大苫小牧打線のスイングの下をかいくぐっていく斎藤佑樹のボールに対し、豪快に投げ下ろす145キロ前後のストレートで攻めに攻め、早稲田実業打線のスイングの上方をその剛速球が通過していく田中将大のピッチング。
翌年、楽天に入団し、やがて不動のエースとして日本一までチームを牽引していった剛腕のピッチングスタイルは、スライダー、フォークのタテの変化を交えながら、ここ一番、勝負どころでは、その剛速球でプロの強打者たちのスイングをねじ伏せていった。