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原口元気は空回りせず、熱く闘う。
「ゾーン」をつかみつつある充実。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/12/18 11:00
屈強なマーカーに挟み込まれても、臆せずに最善のプレーを。原口は精神面の重要性を胸に、自らの価値をさらに高めようとしている。
「集中力がものすごく高い状態でやれた」サウジ戦。
原口は強い気持ちを持つとともに、冷静に試合に臨むにはどうしたらいいかを考えながら、プレーしてきた。今も、それを継続させるための方策について試行錯誤している最中だ。
気持ちを前面に押し出してプレーしようとするあまり、空回りしてしまう選手は少なくない。いわゆる、力んでしまう状態だ。そのプレッシャーを軽減させるという目的で、どんな試合でも同じ心理状態、リズムを貫くためにルーティンを決めている選手もいる。
力まずにプレーすることと、気持ちを前面に押し出すことを、どのように両立させているのか。11月のサウジアラビア戦を1つの例に挙げながら、原口は説明していった。
「例えば、あの試合は本当に研ぎ澄まされている感じで。ワーワーとやっているんだけど、集中力がものすごく高い状態でやれていた。だから、ミスはほとんどしない。これからは(定期的に、あるいは意識的に)そのゾーンに入れるかどうかが大事になってくる。やっぱり、代表の試合だと、入りやすい部分はありますけどね」
ゴール後には大喜びしたが、冷静さも内包していた。
あの試合でゴールを決めたあと、顔が壊れてしまうのではないかと思えるほどに表情を崩して喜んだ。それだけ気持ちが入っている状態だったのは誰の目にも明らかだったが、冷静さも内包していたというのが原口の分析だ。
スポーツ心理学の世界でしばしば語られるのが、「ゾーン」や「フロー」といった状態だ。極度に集中した状態に入ると、試合を支配しているような感覚に陥ったりもするという。俗に言う“火事場のクソ力”も、これに当たるとの意見もある。
マイケル・ジョーダンが引き合いに出して有名になった用語でもあり、日本のサッカー界でも南アフリカW杯で日本代表を率いた岡田武史氏も、インタビューで口にしていた。