ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
獲得賞金ゼロの元天才ゴルフ少年も。
QTという過酷な生存競争に密着。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2016/12/16 11:00
QTのリーダーボードはクラブハウス内にある2台のPCで確認する。そこには来季出場権を争うゴルファーが集まる。
約1500人のQT戦士の頂点に立ったのは20歳の有望株。
ことし、1500人あまりのQT戦士たちの頂点に立ったのは、弱冠20歳の新鋭である。星野陸也は、ことし8月にプロ転向した。身長186cmの大型プレーヤーは、石川遼がマネジメント会社の先輩にあたる。
小学生時代から付き合いがあり、石川が15歳でプロツアーを制覇する前にサインをもらっていたという先見の明の持ち主は、この秋にはレギュラーツアーにスポット参戦し、名を広めた。1次からすべてのステージで3位以内に入る実力を見せつけて、トップ通過を決めてみせたのである。
シード獲得経験のない選手たちのほとんどは、スポンサー契約がない。星野はクラブなどの用具はメーカーのサポートがあるが、QT期間中はユニクロで購入した防寒ウエアを着てプレーした。
「サードQTの前に買ったんですよ。雪が降っちゃって!」と屈託なく笑う。実は予選会の会場にはギャラリーはいなくとも、ゴルフメーカーや代理人筋の人間がズラリと並ぶ異色の空間だ。彼らは次なるスター選手の存在に目を光らせ、接触のチャンスをうかがっている。星野もまた、その対象になったであろうことは疑いようがない。
小6で日本オープン出場の伊藤涼太は26歳になっていた。
ことしシード獲得に至らなかった若手、竹安俊也、浅地洋佑、池村寛世、堀川未来夢といった20代の若手が星野に続いて上位で終え、安堵の表情で6日間の戦いを迎えた。
一方で35位以内というハードルをクリアできずとも、ステップを踏んだ選手もいる。伊藤涼太という名前を聞いたことはないだろうか。かつて小学校6年生で日本アマに出場するなど、天才少年と呼ばれた彼は2013年1月にプロ転向したが、これまでレギュラーツアーでの獲得賞金はゼロ。7月で26歳になった。